研究課題
最終年度は、Mycobacterium avium subsp. hominissuis (MAH)の東アジア遺伝系統(東アジア系統1、東アジア系統2)に特異的な遺伝子の探索を行った。本研究で定義付けられたMAHの5つの遺伝系統間での比較ゲノム解析により、東アジア2系統だけに良く見つかる遺伝子を統計学的手法でスクリーニングした。その結果、糖の1つであるトレハロースの合成に関わる複数の遺伝子の配列が、東アジア系統と他系統とでは大きく異なっていることが判明しました。さらに、東アジア系統特有のこの遺伝子領域は組み換えによって異種から獲得されたと推測された。研究期間全体を通じて、MAHの集団レベルでの比較ゲノム解析と遺伝的集団構造解析を行った。その結果、MAHには少なくとも5つの遺伝系統群が存在し、その分布に地域性が認められることが明らかとなった。また、MAHのゲノム進化パターンを解明し、わが国で優占する東アジア系統株のゲノムの特徴を見出した。以下に、本研究課題により明らかとなったMAHのゲノムの特徴をまとめた。1)MAHは種外から積極的に新しい遺伝子を取り込んでいる。2)比較的長い染色体断片を種内で交換しあう菌種である。3)世界には大きく分けて5系統が分布している。4)日本のヒト分離株は東アジアに分布する2系統(東アジア系統1、東アジア系統2)のどちらかに属する。5)東アジアに分布する2系統間でゲノムの組み換えが頻繁に起こっている。6)東アジア系統に特異的な遺伝子がある。
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Genome Biol. Evol.
巻: 9 ページ: 2403-2417
10.1093/gbe/evx183