研究課題/領域番号 |
15K08795
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
池野 多美子 北海道大学, 環境健康科学研究教育センター, 客員研究員 (80569715)
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研究分担者 |
喜多 歳子 北海道情報大学, 医療情報学部・医療情報学科, 教授 (30530266)
西原 進吉 北海道大学, 環境健康科学研究教育センター, 研究員 (10584344)
山崎 圭子 北海道大学, 環境健康科学研究教育センター, 特任助教 (60732120)
小銭 寿子 名寄市立大学, 保健福祉学部, 准教授 (90364281)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 社会経済要因 / 幼児期発達 / コーホート研究 / 構造分析 |
研究実績の概要 |
目的と研究意義:大規模出生コーホートを用い、3歳時点に、発達の遅れをKIDS(Kinder Infant Development Scale)、問題行動をSDQ(Strength and Difficulties Questionnaire)を用いて評価し、妊娠初期および3歳時の社会経済要因(年収・職業など)が、3歳までの発達にどのように影響を及ぼすか明らかにすることを目的とする。妊娠初期の社会経済要因、喫煙・飲酒など生活環境要因、1歳半時点の発達状況(発達の遅れをKIDSで、自閉症スクリーニングをM-CHATで評価)、養育環境要因等を含め、胎児期から3歳までの要因間の関係を構造的に解析することで、発達障害の早期発見の時期とリスクおよび効果的な予防介入策を解明する。 方法:「環境と子どもの健康に関する北海道スタディ」に参加している2012年3月から2013年1月に生まれた母児714組の親子を対象に、3歳調査票を郵送法にて実施した。発達評価はKIDSとSDQを用いた。社会経済要因は200万円未満から800万円以上まで7段階の選択肢を設けた。物理的養育環境として①住環境(住宅の密集、騒音、採光)②教育的環境(食事回数、食事内容、本や教育的玩具、サークル活動など)を聴取した。1歳半時点の発達、育児ストレス、養育環境、家族関係、養育者うつ状態などのデータは収集済みである。 主たる成果:3歳調査票の累計発送数968件、累計回収737件(回収率76.1%)であった。クリーニング済みの1歳半データ581名について、社会経済要因が自閉傾向に及ぼすリスクを検討した結果、3歳時点の所得が300万未満の場合、800万以上に比べ、児の性別、在胎週数、調査時月齢、父親の教育歴で調整してもリスクが高かった(OR;2.06(95%CI:1.06-6.36)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.3歳調査の実施状況 「環境と子どもの健康に関する北海道スタディ」参加者の内、2011年12月から2013年1月に生まれた母児を対象に調査を実施し、累計発送数968件、累計回収数737件(回収率76.1%)と高い回収率を維持した。現在、データの連結、クリーニングを進めている。 2.1歳半調査データについての解析結果 回収した592名(回収率63.3%)の基本属性は、出産時の母親年齢31.7歳(SD= 5.0)、父親年齢33.5歳(SD6.1)であった。在胎週数は38.9週(SD=1.3)、双胎が3組あり、男児274名、女児323名であった。データの揃っている581名について、社会経済状態とM-CHATによる自閉症スペクトラム疑いとの関連を検討した結果、所得300万円未満は800万円以上に比べ有意に高いリスク(OR;2.06(95%CI:1.06-6.36))となった。妊娠初期からのデータを連結し、胎児期及び出生時の要因と発達との関連を解析中である。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度の研究実施計画 調査票調査:2016年10月まで、3歳調査票を発送・回収し入力する。予想回収数は、最終的に約800件と見積もっている。KIDS,SDQとも検出力は計算により十分確保できると予想している(KIDS 561人、SDQ 512人)。回収を終了した3歳調査票についてデータをクリーニングして固定し、1歳半までのデータと連結する。 解析:胎児期の親の社会経済要因と1歳半の発達との共分散構造分析およびマルチレベル分析を行い、1歳半までの要因間の関連を解明する。 平成29年度の研究実施計画 解析:対象児の妊娠初期から出産時医学的情報、1歳、1.5歳、3歳時調査票を連結して、親の社会経済要因の曝露時期による発達への直接的影響、他の要因への間接的影響を、共分散構造分析およびマルチレベル分析により明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究代表者が本年度予定していた学会(日本公衆衛生学会)及び統計ソフト講習会に、親の介護で日程調整がつかなくなり参加できなかったため、次年度に繰り越すこととなった。
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次年度使用額の使用計画 |
3歳調査進行に係わる通信費、データ入力と連結操作に係わる人件費のほか、解析のための解析ソフト購入、共分散構造分析講習会参加(6月6日と8月24日(東京開催)を予定)、日本公衆衛生学会(11月大阪)参加を計画している。
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