研究課題
スリランカは南アジアの島国であり固有の動物層を持つレプトスピラ症の流行国である。患者の中には抗ハンタウイルス抗体陽性例が確認され、多くの未診断の症例の存在が予想される。また、両疾患ともにげっ歯類媒介性人獣共通感染症である。本研究ではヒトへのレプトスピラおよびハンタウイルス感染の様式と動物の関与を明らかにすることを目的とした。KandyおよびGirandrukotte においてげっ歯類の調査を実施した。Kandyの市街地の市場ではクマネズミ類90%トガリネズミ類が10%混獲された。水田地帯であるGirandrukotte では90%がクマネズミ、その他はオニネズミ, マウス類であった。 ラットおよびトガリネズミからはレプトスピラが分離され、それはL. borgepetersoniiおよびL. interrogansの病原性株であることが明かとなった。抗ハンタウイルス血清抗体保有率は特にGirandrukotte で19%と高かった。宿主はlineage B1に属するスリランカ固有クマネズミであり、タイランド型に関連するハンタウイルスの感染源であることが明らかとなった。人においては全島横断的なハンタウイルスの抗体調査を実施した。その結果、原因不明慢性腎臓病患者(CKDu)の約50%が抗ハンタウイルス抗体を保有していることが明かとなった。ハンタウイルス抗体陽性者は壮年の水田農家の男性が優位に多くかった。一方で、CKDu流行地での健常者の抗体陽性率は役18%、CKDu 非流行地の健常人では3.5-5.5%であり、ハンタウイルス感染が急性感染症というよりはむしろCKDu発症のリスクの1つである可能性が示された。本研究より、スリランカでは固有種のクマネズミを感染源として、レプトスピラおよびハンタウイルスの感染が起こっており、さらにCKDuの発症リスクとなる可能性が示された。
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International Journal of Infectious Diseases
巻: 57 ページ: 77~78
10.1016/j.ijid.2017.02.004