研究課題
2002年(ベースライン調査)、2004年、2007年、2011年に行った病歴調査の結果と2002年以降の健診における血糖値をもとに糖尿病発症を把握したデータベースを有している。2017年度は、このデータベースにある出生時体重と母親の糖尿病家族歴との関連について検討した。妊娠期の母親の耐糖能異常は、児の血糖上昇に伴うインスリン過剰分泌を介して、児の脂肪蓄積すなわち巨大児の出産に繋がるとされている。出産後糖尿病を発症した女性は、妊娠期にも何らかの耐糖能異常を有していたと考えると、本データベースにおいて高出生時体重群では母親の糖尿病家族歴有する者の割合が高いという仮説が成り立つ。3340名(男性2479名、女性861名、平均年齢46.4±7.2歳)を対象に出生時体重を2500g未満、2500g以上3000g未満、3000g以上3500g未満、3500g以上の4群に分けると、母親の糖尿病歴は順に20/227名(8.8%)、99/1534名(6.5%)、67/1289名(5.2%)、20/290名(6.9%)と2500g未満群で最も高く、その後低下し、3500g以上群で再び高くなった。母親が糖尿病を発症した年齢を比較すると、平均年齢は同順に50.3±10.7歳、60.7±12.4歳、55.9±11.8歳、56.7±11.4歳と2500g未満群で出生した者の母親が最も低い年齢で糖尿病を発症していた。これは、低出生体重児を出生した母親は将来若い年齢で糖尿病を発症するリスクが高い可能性を示唆している。この結果は、女性の糖尿病発症予防において、従来の巨大児を出生した女性は将来糖尿病を発症リスクが高いというエビデンスに加えて、新たな視点を与えるものである。
2: おおむね順調に進展している
これまで出生時体重と糖尿病発症との関連について、縦断的な視点で解析を進め、結果を得てきた。2017年度は新たに対象者の出生時体重とその母親の糖尿病罹患歴との関連について検討し、低出生体重児を出産した女性は将来糖尿病を発症するリスクが高いとの結果が得られた。この結果は、女性の糖尿病予防対策に資するものである。また、現在、保存した試料よりDNAを抽出し、遺伝子多型を分析中である。
従来より検討している出生時体重と成人期の生活習慣病発症との関連について、糖尿病に加えて心血管事故等との関連の検討を続けていく。遺伝子多型の情報を加味した検討も実施する。
(理由)保存試料のDNA分析を進めているが、その進行状況に合わせて物品を購入したため差額が生じた。(使用計画)DNA分析に掛かる費用と統計ソフトやパソコン等の研究環境整備に向けた支出に充てる予定である。
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Journal of Epidemiology
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10.2188/jea.JE20170048