研究課題
ATP-binding cassette protein A1(ABCA1)という分子はHDLコレステロールの生成過程で重要な役割を果たしており、ABCA1遺伝子が欠損している人では、血清HDLコレステロール値が著しく低値(10mg/dL未満)であり、欠損がない人に比べて循環器疾患のリスクが高いことが報告されている。また、このABCA1遺伝子に「DNAのメチル化」が起きると血清HDLコレステロール値が低下することも分かっている。そこで、2019年度、我々が2013年に収集したDNAを使って、ABCA1遺伝子のDNAメチル化解析を行い、同時に収集した出生時体重との関連を検討した。出生以後の疾患の発症による影響を除くために、高血圧、糖尿病、脂質異常症の既往歴を有する者を除いた男性421名(35歳から59歳、平均50.7±6.1歳)、女性108名(37歳から59歳、平均50.7±5.4歳)を解析対象とした。DNAのメチル化率の平均(標準偏差、最小、25%タイル値、中央値、75%タイル値、最大)は、男性では35.9(6.3、14.8、31.6、36.5、40.1、54.9)%、女性では35.3(6.3、17.7、31.5、35.7、40.2、48.6)%であった。凡そ平均値を中心とした山型の分布であった。男女間に統計学的に有意な差はみられなかった(p=0.410)。出生時体重を2500g未満、2500g以上3000g未満、3000g以上の3群に分け、男女別にABCA1遺伝子のDNAメチル化率(%)を比較した。DNAメチル化率の平均±標準偏差は、男性では、2500g未満群、2500g以上3000g未満群、3000g以上群の順に36.0±5.6(31名)、35.9±6.5(168名)、35.7±6.3(222名)であった。女性では、同順に33.1±8.4(13名)、35.0±6.2(47名)、36.2±5.6(48名)であった。男性では出生時体重が小さい群ほどメチル化率の平均値が高く、一方、女性では小さい群ほどメチル化率の平均値が低かった。男女ともに統計学的に有意な差はみられなかった。
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