研究実績の概要 |
本課題では胎動自覚の正常範囲を調べ、地域の妊婦に胎動カウントを普及が周産期死亡率減少に与える影響を調べることを目的とした。県内20施設の分娩を取り扱う産科診療所および病院にて正常分娩に至った2337例の胎動カウントチャートを解析し、以下の2点を明らかにした。 1. 34週以降に妊娠週数が進むに連れて10回の胎動自覚に要する時間は緩やかに増加傾向を示すも、ほとんどが30分以内であった(4-5分:10パーセンタイル、9-12分:中央値、18-29分:90パーセンタイル)。10回の胎動自覚に30分以上を要した症例は233例(10.0%)で30分以内の症例2104例に比べて、初産、39週以上の妊娠週数、および出生体重3000g以上の症例の割合が有意に多かった(初産:p=0.04,39週以上の妊娠週数:p=0.001, 出生体重3000g以上:p<0.001)。 2.胎動カウントの啓発を行った2015年以降の滋賀県の後期死産率および周産期死亡率は低下を続け2016年、2017年とも全国平均を下回っていた(後期死産率:滋賀/全国=1.7/2.9;2016年, 2.4/2.8;2017年、 周産期死亡率:滋賀/全国=2.4/2.6;2016年, 3.1/3.5;2017年)。各種指標が改善した要因の一つとして、胎動カウントの啓発により胎動減少を自覚した妊婦が早期に医療機関を受診し子宮内胎児死亡を防げた可能性もあると考える。 以上の結果より、地域への妊婦への胎動カウント啓発はその地域の周産期死亡減少につながる可能性がある。
|