研究課題/領域番号 |
15K08807
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
松本 武浩 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 准教授 (20372237)
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研究分担者 |
川崎 浩二 長崎大学, 病院(医学系), 准教授 (60161303)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 地域医療ICTネットワーク / 地域連携パス / EHR |
研究実績の概要 |
医療費高騰対策として専門病院から診療所等への逆紹介が推進され、治癒患者や軽微な疾患だけでなく難病や専門性の高い患者も逆紹介されつつある。このため専門性の高い診療を専門家が支援する仕組みが必要であり、地域連携パスに期待されたが、その効果評価は低く有効な対策は現存しない。一方、近年、普及しつつあるICTを使った医療情報ネットワーク上に地域連携パスを構築すれば、専門医がオンライン上で診療結果、経過を把握でき、その時点で専門的な支援が可能となる。また、入力支援や結果に基づく診療判断、支援機能の実装により地域医療、特に専門診療の質は向上するものと思われる。本研究では全国でも最大規模のネットワークである長崎県の「あじさいネット」上でICTネットワーク型地域連携パスを開発しテスト運用、実運用を経て本システムの評価することにより、地域内での専門診療の質向上と地域内均てん化の実現を目的としている。平成27年度は乳がんパスを対象に紙媒体の地域連携パスをもとにシステムを開発した。診療予約機能より専門医が希望する適切な診察間隔を実現し、外来受診時の診察および検査内容の標準化により専門医が必要とする診察所見と検査結果が確実に記録される仕組みとし、これらの結果から予定どおりの外来受診率や診察、所見の実施率を自動表示する仕組みを評価として実装した。平成28年度は対象パスを「胃がん」、「大腸癌」、癌以外では「緩和ケア」、「大腿骨頸部骨折」、「脳卒中」へと広げた。H27年度末より乳がんパス、胃がんパスを対象として、診療所との間で運用テストを開始し、その評価の中で、実際の運用方法の具体化、同意書の策定に取り組んだ。また、正確なデータ入力に向け検査データの自動格納に必要なシステム開発と主要検査データの標準化を実施した。平成29年度では実運用を開始しさらに課題収集と評価を実施する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
理由 今年度の研究計画は「ICTネットワーク型電子化地域連携パスの初期運用とシステム改善」である。平成27年度に「乳がん」のICTネットワーク型地域連携パス(以下ネットワーク型パス)を開発しテスト運用を開始した。さらにテスト運用の質向上に向けては「乳がん」パスだけでは不十分と判断し、新たに「胃がん」のパスを開発した。一方、「乳がん」および「胃がん」は専門医である基幹病院と協力医療機関である診療所等を定期的に受診することで、患者の質的管理を共同で実施するものであり、交互に受診するために、地域連携パスでも「循環型パス」と呼ばれる。これに対し急性期病院から慢性期病院への転院のように一方向性のパスも存在する。(以下「一方向型パス」)本システムにおいて「一方向型パス」の対応も必要と判断し、このようなパスの代表である「脳卒中」および「大腿骨頸部骨折」の開発準備のために長崎市内で両者を運用している両協議会に本システムを説明し担当者とのヒアリングをスタートした。「乳がん」「胃がん」の運用テストに関しては、専門病院(管理施設)としての長崎大学病院内の医師と連携施設としての2か所の診療所の協力が得られ、それぞれテスト患者を設定し実運用テストを実施した。その結果、項目内容の修正、記録内容の診療記録としての利用に向けた印刷イメージの策定および診療所電子カルテへのコピー運用の簡便化等の要望に加え、自動格納された検査データの表示に関する要望等への対応を実施した。現在は、対象例のエントリー待ちであり、同意取得が得られ次第、実運用予定である。以上により今年度の計画はおおむね予定どおり遂行した。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は、現在構築した乳がんパス、胃がんパスに加え、「循環型パス」としては、大腸癌パス、緩和ケアパスを構築する。また「一方向型パス」としては脳卒中パス、大腿骨頸部骨折パスを構築する方針である。現時点で完成している乳がんパス、胃がんパスを実患者に適応し、運用上の課題抽出と評価を実施する。まず簡単な評価として本システムに構築した受診状況や予定された診察内容、検査内容の自動評価機能によりがん専門医が想定しているがん患者の適正管理が実施可能かどうかを評価する。 また、基幹病院のがん専門家が自院外来のみで管理システムケースにおいて、経過中の再発や増悪、腫瘍マーカーを含めた検査データの異常値出現等により随時その時点での対応が可能であるかどうかを評価する。一方、検査データ自動格納においては、そのデータの適切性、自動入力タイミング、正常値の相違等に対する評価を実施し、ネットワーク型パスにおける適切な検査データ共有に関する課題について評価する。最終的には長崎大学病院以外の管理病院を選定、運用教育を実施、長崎大学病院同様の結果が得られるかについて評価し、本システムを完成させる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度は予定していた謝金を使用しなかったため次年度使用額が発生した。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度の謝金および交通費として使用する。
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