研究課題/領域番号 |
15K08810
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研究機関 | 福島県立医科大学 |
研究代表者 |
安村 誠司 福島県立医科大学, 医学部, 教授 (50220158)
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研究分担者 |
中山 健夫 京都大学, 医学研究科, 教授 (70217933)
佐藤 理 福島学院大学, 公私立大学の部局等, 教授 (90107243)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 東日本大震災 / マスメディア / 健康不安 / 放射線 / 福島 / 心的外傷後成長 |
研究実績の概要 |
平成27年度の文献検索、新聞・テレビ等のメディア関係者・福島住民への面接調査を通じて、福島県民への質問紙を用いた郵送調査により、放射線による健康への影響不安についての調査広告を選定した。 郵送調査の対象は、福島県の浜通り、中通り、会津、及び、避難区域の住民から約2,000人を無作為抽出した。質問項目は、性・年齢・家族構成・子どもの有無、学歴・就業状況、、居住地・居住形態、避難による転居の有無、生活習慣、保健行動、マスメディアによる情報別の信用・利用、放射線に関する知識、ヘルスリテラシー、PTG(心的が外傷後成長)、社会的紐帯、地域組織・団体への加入、アウトカムとしての震災直後・現在の健康不安などである。 回答率は、44.5%(861/1,934、男性382人、女性479人、青壮年(20歳以下)264人、中年(21-64歳)336人、高年(65歳以上)323人)であった。 アウトカムである「現在の健康不安」の関連要因を明らかにする目的で、単変量解析を行った。有意に関連したのは、女性であること、年齢が若いこと、避難区域であること、自宅以外居住、就労していない、健康状態が悪いこと、ヘルスリテラシー得点が引くこと、政府省庁情報・自治体情報を信用しないこと、地元民放情報を利用しないこと、NGO情報を信用すること、Netsite情報・口コミ情報を利用することなどが有意であった。 今後、単変量解析で有意になった要因を用いて、多変量解析により、現在の健康不安を規定している要因を明らかにする予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
3年間の研究期間の2年目の研究内容として、当初計画した研究計画書とほぼ同じ内容の調査研究が実施できている。なお、当初、懸念のあった低い調査回答率については、過半数以上の回答はなかったものの、被災地における調査にしては、先行研究等と比較しても決して低くない回答率であったことは、本研究結果を解釈する際に大変重要な点である。 なお、分析については、単変量解析で解釈が困難な結果も見られ、多変量解析を行う際には十分気をつけなければならないことが分かった。そのため、解析については、平成28年度のみで完結しなかったが、平成29年度も引き続き、慎重に解析を進めていく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画書に記載のあるように、平成27年度、28年度の研究結果に基づき、マスメディア、住民(福島県民)、行政(国の代表として復興庁、福島県庁、市町村担当者)によるワークショップを開催する予定である。これは、今回の東日本大震災における福島の避難住民の健康不安へのマスメディア報道の影響の検証を行い、今後の福島におけるマスメディア報道のあり方について議論を深めることが目的である。 上述のワークショップの結果を踏まえ、今後の災害等が発生した場合などの住民にとって必要、かつ、求めるべき情報の内容、質、意義等について検討し、今後の方向性を示すような報告書してまとめ、提言を行えればと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
郵送調査による回収率が若干予想よりも低かったこともあり、伴うデータ処理、通信運搬費、消耗品費等が、若干安く済んだことが主因であると考える。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度に予定しているワークショップ開催に関する経費は未定の部分があり、その対応に用いる予定である。また、最終年度のまとめとしての報告書の印刷を考えており、予定では印刷部数は極めて少ないため、もし、経費にゆとりがある場合には、印刷部数を増やし、関係機関に配布したいと考える。
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