研究課題
本研究の概要は、頭部MRI画像変化を有する群と認知機能の低下を有する群に注目し、血管性認知症の診断指標として有力視されている血管作動性生理ペプチドMidregional- proadrenomedulin(中央領域プロアドレノメデュリンMR proADM)について検討することである。追跡調査対象者は、平成20年と 同25年の計2回、本調査への参加者298 名(平均 70.8歳)である。 平成29年度は、血管作動性生理ペプチドMR proADMを測定し、頭部MRI検査結果や臨床情報との関連について、主たる解析を終了した。本研究意義として、 血管作動性白質病変のスクリーニングマーカーとして有用であるかなどを明らかとすることである。①大脳白質病変の各grade群(頭部MR所見でのG0-G3群)間で、MR-proADM値は、大脳白質病変のgradeの進行に伴い有意に高値であった。 ② MR-proADMについては、MR-proADM高値を有するオッズ比が、G3群で3.08と有意であり、MR proADMが、独立した認知機能低下を伴う大脳白質病変の危険因子であった。 ③ 脳高次機能は、Word fluency testが、大脳白質病変のgradeの進行およびMR-proADMと有意な負の相関を認めた。 ④ MR-proADM測定データを継時的に比較したところ、 有意な経年的な上昇が認められた。以上より 、血中MR-proADM高値が、認知機能低下を伴う白質病変と関連し、有用な臨床指標であることが示唆される結果が得られた。 その第1報は、 J Alzheimers Disに、英語論文として掲載された (Kuriyama N,et al. J Alzheimers Dis. 56:1253-1262,2017)。 現在、血管作動性生理ペプチドMidregional- proadrenomedulin(中央領域プロアドレノメデュリンMR proADM)上昇に関連しうるリスク因子に関する測定と、さらなる詳細な検討に取り組んでいる。
2: おおむね順調に進展している
研究計画の進捗状況であるが、インフォームド・コンセン トを得て追跡している298人の集団を対象にして、引き続き、長期にわた る追跡調査を実施することの周知を兼ねて、 研究成果についての確認作業を進めている。 生活習慣や臨床情報に加え、 頭部MRI 検査や採血等の確認作業は、順調に終了した。平成30年度は、 今までの解析を継続して進めるとともに、血管作動性物質 MR proADMに関連しうるマーカーKlothoなどの候補関連マーカーにも注目して解析している。以上、上記測定と共に解析準備に入っている段階であり、本研究自体は順調に進んでいる。
平成30年度は、引き続き、 Klothoをはじめとする関連マーカーの解析およびデータ整理を進める。そして、認知機能低下のリスク因子に関する多面的な解析を推進する予定で ある。具体的な解析方法として、 認知機能低下や頭部MRI画像変化の有無に関する2群間比較に加えて、有意性の得られた要因の相互関係を補正するために、性と年齢に加えて有意性の得られた要因を同時に投入して多変量解析を行い、オッズ比とその95%信頼区間などを求める。研究成果の情報発信として、学会発表や論文作成として報告する予定である。
平成30年度は、 血管作動性物質 MR proADMの第1報論文が無事に発表できたので、 研究概要に書いているように、MR proADM上昇にも関与しうる関連マーカ ーKlothoなどにも注目して、解析を実施している。 現在、解析準備に入っているためである。
すべて 2017
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 2件)
J Alzheimers Dis
巻: 56 ページ: 1253-1262
10.3233/JAD-160901