研究課題
川崎病は乳幼児に好発する急性の全身性血管炎で、後天性心障害の原因となる。病因は解明されておらず、その疫学的特徴から感染性因子の関与が示唆されている。しかしながら、川崎病急性期に採取された検体から病原微生物は分離されていない。一方で、川崎病は臨床症状・所見によって診断される症候群で、例えば腹部症状や頚部リンパ節腫大など出現の頻度や程度が異なる。本研究では、川崎病発症に感染性因子が関与すると仮定し、宿主の年齢は重要な条件と仮説を立てた。年齢層によって発症に関わる感染性因子が異なる可能性を考え、川崎病発症時の年齢で層別化して疫学像を明らかとした。なお、川崎病の発症や冠動脈異常発生に性差があることがわかっているため、本研究では年齢と性別の組み合わせに着目した。和歌山川崎病研究会が、和歌山県内の小児科病床を有する医療機関を対象として年1回実施した新規症例調査(回収率100%)データを用いて、連続する2106例を対象に疫学研究を実施した。発症時年齢を5分割(6か月未満、6-11か月、1-2歳、3-4歳、5歳以上)して検討した結果、男女比は年齢層が上がるにつれて小さくなり、5歳以上で性比が逆転した。発症の季節は、6か月未満では夏・秋の発症が半数を超えた。初回の免疫グロブリン超大量療法に抵抗した(奏功しなかった)症例は全体の23%(男68%)で、夏・秋よりも冬・春に抵抗例の割合が高い傾向を認めた。冠動脈異常を2.8%に認め、巨大瘤8例(男2例、女6例)のうち4例は秋発症の川崎病であった。冠動脈異常発生について1-2歳の男児を基準とした場合に、5歳以上の男児のオッズ比は3(95%信頼区間 1.4-6.7)、6か月未満女児のオッズ比は3.6(95%信頼区間 1.1-11.8)で、それぞれリスクの上昇を認めた。川崎病発症と冠動脈異常発生のいずれにおいても発症時の年齢と季節は重要な要素である。
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