| 研究課題/領域番号 |
15K08820
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| 研究機関 | 順天堂大学 |
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研究代表者 |
湯浅 資之 順天堂大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (30463748)
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| 研究分担者 |
横川 博英 順天堂大学, 医学部, 准教授 (00328428)
北島 勉 杏林大学, 総合政策学部, 教授 (10234254)
白山 芳久 順天堂大学, 公私立大学の部局等, 助教 (30451769)
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| 研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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| キーワード | 生活習慣病 / 糖尿病 / 高血圧 / 有病率 / ミャンマー |
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| 研究実績の概要 |
本研究はミャンマーにおける糖尿病と高血圧の実態を把握することを目的に行われた。報告者らが研究開始前に同国で予備調査を行ったところ、患者の半数が高血圧症、1割が糖尿病に罹患しており、非顕在化された公衆衛生上の脅威であることが判明した。だが、この脅威を裏付ける同国における他のエビデンスは見当たらず、現行保健システムも母子保健と感染症対応で手一杯な状況にあるため、同国の保健関係者における生活習慣病に対する関心は極めて低い状況にあった。
当初、本研究は費用対効果分析を行って現行保健システムに負荷の少ない予防策を提案することを目的に開始したが、介入を始めるにもその根拠となる基礎データが全く存在していないことが判明したこと、更に同国の糖尿病学会から糖尿病の実態の把握と政策化に必要なエビデンスを出すことに対する協力要請があったことから、先ずは同国における糖尿病の疫学実態の解明を中心に研究を行うことになった。
そこで研究チームは（１）同国における糖尿病患者数の推計、（２）糖尿病のDALY（disability adjusted life year；障害調整生命年）の推計、（３）糖尿病による経済疾病負荷推計を行い、これを保健省や政府に提示して糖尿病予防策を立案するために必要な基礎資料を作成することとした。
糖尿病患者数について、2014年にミャンマー糖尿病学会が実施した調査結果を分析し、患者推計を行った。KISH法によりサンプリングされた全国の25～64歳の一般住民8,324人における糖尿病患者は10.5％、うち55～64歳では22％と推計された。また、19.7％が糖尿病予備軍に相当すると考えられ、全体では約3割が耐糖能異常であることが初めて判明した。これはスリランカの8.8％、タイの6.7％よりも高く、アジアで同国は相対的に糖尿病リスクの高い国であることが分かった。
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| 現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ミャンマーにおける糖尿病患者数の推計に関して、先ずは世界保健機関（WHO）の指導により2014年に同国が実施したSTEP調査結果を入手し、その分析を行った。この横断研究結果から外挿法による患者推計の妥当性を検討した。従来、同国では全国規模で罹患率調査が断片的に実施されてきたため、それらの結果をもとに推計する方法を検討した。
DALYは、必ずしもリハビリテーションの理念にそぐわないとか様々な批判にもなっているが、国際比較可能な疾病負担の基準値となっているため、その推計は重要である。ミャンマーでは過去に糖尿病のDALYが137.7というデータが一度だけ世界疾病負荷研究グループにより公表されているが、それ以外のデータを得ることはできなかった。
糖尿病の経済評価に関する文献検索を行った。Pubmedでdiabetes mellitus、developing countries、cost analysisを検索語として2005年以降に発表された論文を検索したところ42本がヒットした（原著11本、総説/解説30本、臨床ガイドライン1本）。原著のうち、特定の国の糖尿病の費用又は糖尿病の予防や治療に関する経済評価に関する原著5本とそれらの論文をレビューしている過程で発見した2本の論文を用いて糖尿病による経済疾病負荷推計の方法を検討した。その中でカンボジアを対象に行われたMarkovモデルを用いた2型糖尿病の費用対効果分析が活用できると考えられた。モデルとして、毎年人口の５分の１が高い年齢層に移行すると考え、一定割合が合併症がない糖尿病に罹り、当人はそれを知らないと仮定した。また、診断されるまで平均7年間かかると予想された。１サイクル後（ｔ＋１）の各状態の人数は各状態の人数かける各移行確率によって決まるとしたモデルを作成した。
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| 今後の研究の推進方策 |
ミャンマーにおける糖尿病患者数の推計に関して、同国における失明率がアジア諸国で最も高いことから、糖尿病性網膜症である可能性は否定できず、その真偽を確認する必要がある。そこでヤンゴンで最も多くの患者が集まり、共同研究協力者が院長を務める私立病院を受診する患者を対象に、眼疾患を伴った糖尿病患者の割合を調べる調査を行う予定である。同時に、同病院で外来患者を対象にWell-controlledとUn-controlledの群とに分けて患者特性を見ることで、同国の糖尿病患者の臨床的実態を解明することができると考えている。また、ここで得られるデータは糖尿病の経済疾病負荷評価を行う上でMorkovモデルを使用する際に必要となる移行率に利用することができる。
DALY推計値はWHOが示した算出方法で計算する予定である（WHO methods and data sources for global burden of disease estimates, 2013）。
前述の通り、糖尿病の経済損失評価はMorkovモデルを利用して研究を進める予定である。その準備として移行率が必要となる。Morkovモデルでは、患者が合併症を発症する前に診断された時に食事療法を受ける場合、患者が現状に留まる場合、合併症が発症する場合、経口糖尿病薬を飲むかまたはインスリンを使用する場合、糖尿病関連もしくは糖尿病以外の要因で死亡する場合等のイベント間における移行率を仮定する必要がある。移行率は国によって異なることが予想され、日本の数値を使用すると誤差が生じる恐れがある。しかし同国での先行研究はないため、研究協力者の病院において実施予定の予備調査によって移行率を計測し、これを用いて経済的疾病負荷を推計する計画である。
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| 次年度使用額が生じた理由 |
研究対象国であるミャンマーには本研究を進めるに必要な基礎的資料や情報が全く存在していないことが判明し、初年度は既存資料の収集および分析方法の検討に費やされたために、当初予定していた程に経費はかからなかった。
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| 次年度使用額の使用計画 |
次年度は、初年度に収集したデータや情報をもとに実質的な分析を行う予定であり、そのための増員した協力研究員の現地渡航費の増額分に使用する予定である。
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