研究課題/領域番号 |
15K08822
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
白山 芳久 順天堂大学, 国際教養学部, 助教 (30451769)
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研究分担者 |
湯浅 資之 順天堂大学, 国際教養学部, 先任准教授 (30463748)
横川 博英 順天堂大学, 医学部, 准教授 (00328428)
峰松 和夫 長崎大学, 教育学部, 准教授 (60622644)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 移民労働者 / 生活習慣病対策 / チェンマイ |
研究実績の概要 |
タイ北部の中心都市チェンマイには、2016年統計で81,299名が移民労働者として登録されている。大半がミャンマーもしくはタイヤイと呼ばれる少数民族の出身で、ミャンマー語は話すことも読み書きすることもできるが、タイ語の運用能力は個人差がある。タイやチェンマイの文化への同化の度合いにもばらつきがある。本研究課題では、新しい文化への同化の度合いを、移民の健康状態(高血圧、糖尿病、肥満、精神的ストレス等)と結び付けて調査し、文化同化度の健康への影響を検証する。 The East Asian Acculturation Measure (EAAM) Scaleは、Barryらによってアジア社会で有効性が確認された文化同化度を測る指標である。EAAM Scaleの英語版をミャンマー語版に翻訳し、30名の移民労働者を対象に質問票の信頼性・妥当性を検証する調査を実施した。 対象者の属性は、年齢30±7.6、男性20名/女性10名、既婚19名/独身11名、教育歴は12名が中学/9名が高校/その他が9名であった。18名が日雇/8名が月単位の雇用で、建設業関係の仕事が半数を占めた。全員がEAAM Scaleの29の質問項目すべてに回答をした。EAAM Scaleでは同化度を4つのグループに分類するが、1)同化0名、2)分離化18名、3)統合化11名、4)疎外化1名であった。Cronbachのα係数は、全体では0.73、分類ごとでは1)0.61、2)0.66、3)0.70、4)0.74であった。 翻訳後の質問票は、十分に回答が得られ、尺度の内的整合性も高かった。今後は、移民労働者が多く利用するチェンマイ市郊外に位置するSaraphi 郡病院で、移民労働者が毎年受診を義務付けられている健康診断の機会を利用して健康状態に関するデータを集め、EAAMミャンマー語版による文化同化度との相関を検証する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまで、日本側研究者とタイ側研究者とは複数の共同研究を実施してきた経験があり、親密な関係を構築している。また、研究実施場所のチェンマイは、治安面でのリスクも低い。 チェンマイの国立ラチャパット大学公衆衛生学科の地元の研究者からの協力だけでなく、チュラロンコン大学所属のミャンマー国籍の研究者が研究チームに加わっていることで、ミャンマー系移民へのインタビュー調査が可能となった。 ミャンマー系移民労働者は、労働許可や正式な身分証明書を持っているかどうか、移住に至った経緯など、様々な理由によりタイ人保健医療従事者や研究者に対しては協力を拒む場合もある。調査への協力を得るには、ミャンマーやタイヤイの言語・文化に精通したインタビュワーが鍵となる。
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今後の研究の推進方策 |
研究3年目は、データ収集を実施し、日本にデータを持ち帰り解析する。 移民労働者が多く利用するチェンマイ市郊外に位置するSaraphi 郡病院にて、移民労働者が毎年受診を義務付けられている健康診断の機会を利用して健康状態に関するデータを集める予定である。同病院長は、本研究の意義をよく理解し、調査実施に合意している。チェンマイ県保健局から、正式な調査実施の許可が下り次第、具体的なデータ収集のプロセスを開始する。 The East Asian Acculturation Measure (EAAM) Scaleによる文化同化度の分類によって、生活習慣病リスクに統計的有意な差が認められるか検証する。 新しい文化への同化を移民に強制することは本研究の目的ではない。文化同化度に応じて、ヘルスプロモーション活動実施の上で、様々な配慮やアプローチの仕方に工夫が必要であり、チェンマイでの経験をもとに、ASEAN地域の移民労働者の健康向上に結び付く公衆衛生上の戦略について提言を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
本格的なデータ収集が研究2年目から3年目へと後ろ倒しになったため。チェンマイ県保健局からの正式な研究許可が下り次第、公立病院での健康状態に関するデータ収集を開始する。
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次年度使用額の使用計画 |
研究3年目には、本格的なデータ収集が実施されるため費用支出が見込まれる。 また、最終年度であるため、日本側の共同研究者らがタイ国チェンマイに訪問して最終的な研究結果を取りまとめる会議も開催する予定である。そのため、海外渡航費用などの積み上げが必要である。
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