研究課題/領域番号 |
15K08823
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
顧 艶紅 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 客員研究員 (30470595)
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研究分担者 |
牛嶋 大 公益財団法人がん研究会, ゲノムセンター, 研究員 (60328565)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 妊婦 / 微量栄養素 / 甲状腺ホルモン / 総ホモシスティン / 生物的交互作用 / 胎児発育 / 疫学 / 神経管閉鎖障害 |
研究実績の概要 |
神経管閉鎖障害において、妊婦に対する葉酸補充対策の実施後にも発症例がみられた。葉酸欠乏以外の原因も発症に関与していると考えられる。母親の甲状腺ホルモンは胎児の脳の発育に影響を与える。プロホルモンのT4が甲状腺から分泌され、変換酵素のiodothyronine deiodinase(DIO)によって、生理的に強い活性を示すT3へと変換される。 前年度の解析では、中国山西省の山間地域に居住していた神経管閉鎖障害児を妊娠した妊婦において、血中甲状腺ホルモンのレベルが血清総ホモシステインの関連効果を疫学的に修飾し、両者に生物的交互作用が認められた。 今年度のさらなる解析では以下のような結果を得た。 ①症例群と対照群ともに抗甲状腺抗体(抗thyroid peroxydase抗体あるいは抗thyroglobulin抗体)の陽性率が低く、2群に陽性率の差が認められなくて、しかも神経管閉鎖障害との関連がみられなかった。②症例群をさらに無脳児、水頭症と二分脊椎の妊娠にグループ分け、多項ロジスティック回帰分析を行なった結果、血中甲状腺ホルモンFT4が15.2 μmol/L以下の場合は、無脳児と水頭症児の妊娠では血清総ホモシステインが神経管閉鎖障害との関連はあり、二分脊椎では関連はなかった。③単変量解析では4種類のDIO2遺伝子のSingle Nucleotide Polymorphisms (SNPs)と神経管閉鎖障害との関連がそれぞれ認められなかったが、血中甲状腺ホルモンFT4が15.2 μmol/L以下の場合は、1種類のSNPが神経管閉鎖障害との関連が認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
いままで良好なコミュニケーションをとってきた。 平成27年度に神経管閉鎖障害に関して、妊婦の血中総ホモシステインと甲状腺ホルモンとの生物的な交互作用があると解明し、論文投稿中である。 平成28年度にはさらに神経管閉鎖障害が抗甲状腺抗体陽性との関連がなかったことが明らかになり、神経管閉鎖障害の種類別の解析も行なった。また、遺伝子多型の単変量解析も行なった、引き続き、欠損データを中国の研究者と連携して、補足できるようにして、解析していきたい。
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今後の研究の推進方策 |
解析するのにSPSS統計ソフトが不十分で、やはりSASによる解析を導入する必要がある。貴重な検体なので、多少の欠損Dataがあり、中国側の協力研究者と打ち合わせと確認しあう必要がある。 平成29年度において、予定通りで以下の解析を行なう。 ①関連遺伝子の多型を用いて、Hardy-Weinberg平衡に関する解析を行なう。②限られたサンプルで、遺伝的に連鎖している多型の組合せに関する解析を試みる。③血中甲状腺ホルモンレベルが正常範囲内の相対的に低い場合は、関連遺伝子の多型が葉酸欠乏との生物学的交互作用について解析する。④国内・国際学会および英文論文で研究成果を発表する。
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次年度使用額が生じた理由 |
職場の異動に伴い、効率よく研究と事務作業を進めるため、2017年2-3月の一部の研究活動を2017年4月以降にずらした。
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次年度使用額の使用計画 |
論文投稿料、打ち合わせ・交流のため、中国共同研究者らが来日する旅費と宿泊費、およびソフト購入費などに使う。
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