研究課題/領域番号 |
15K08826
|
研究機関 | 関西医科大学 |
研究代表者 |
三宅 眞理 関西医科大学, 医学部, 講師 (50434832)
|
研究分担者 |
西山 利正 関西医科大学, 医学部, 教授 (10192254)
吉村 匡史 関西医科大学, 医学部, 講師 (10351553)
下埜 敬紀 関西医科大学, 医学部, 助教 (40632625)
神田 靖士 関西医科大学, 医学部, 准教授 (70295799)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 介護労働負担軽減 / 身体的負担量 / 精神的負担量 / 職業性腰痛予防 / トーンエントロピー / モーションキャプチャー / 動作分析 / 豪日比較 |
研究実績の概要 |
近年、わが国では、介護機器や介護ロボットの導入が要介護者の自立支援と介護者の負担軽減に資する観点から期待されている。しかし、これまで本申請者が行った日豪の比較調査では、日本の介護職員の介護機器の利用率が低く、腰痛や筋骨格系の有訴者が多く出現した。一方、豪州や英国では介護機器の活用を義務づけており、その評価法は確立している。したがって、日本の介護の労働環境の改善および安全管理と評価法の見直しは喫緊の課題である。本研究は、介護機器を用いた介護サービスのリスク評価を確立するため、携帯型情報通信技術(以下ICT: Information and Communication Technology)を用いた評価ツールを開発する。介護者の身体負担量の可視化から介護労働環境の改善と介護者と要介護者の安全を確保することを目的とする。 これまで、介護労働を軽減する認知症ケアプログラムと介護労働軽減プログラムの効果について介護者の身体負担量を、「睡眠と生活リズム」と「歩数と活動強度(Mets)」を用いて調査をしてきた。さらに、本研究では携帯型心拍変動測定器で測定した心電図のR-R間隔のデータをテキスト形式で出力し時系列解析し、自律神経のバランスを評価ができるインターフェースの開発を試みる。次に、介護の動作解析を行い介護者の腰痛の発生や負担を予防するフィードバック機能システムをインターフェースに搭載する。特に、腰痛の有訴者には、バイオメカニクスから評価した注意信号を発信するとともに、介護e-ラーニングシステムを配信する。介護労働軽減プログラムの促進をはかり、介護者自身がICTを簡便に用いて介護労働を科学的に捉え、自身の身体負担量の軽減を目的とした認知行動変容をおこすための評価システムを開発する。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
介護労働軽減プログラムの評価Ⅰ.Ⅱ.Ⅲに対して、表面筋電図に加えて加速度と心拍数の変化量の分析を加える。 Ⅰ.ベッドの高さ調整と介助シート(以下:スライディングシート)の使用の表面筋電評価 表面筋電評価を用いて,ベッドの高さを85cm(腰より上)と47cm(腰より下)に調整し比較した結果,85cmの大腿二頭筋の放電量が小さくなったことから,47cmでは体をかがめて動作を行うためであると考えられる。 Ⅱスライディングシート使用の有無について比較した結果,スライディングシート使用時には複数の筋放電量が小さく,未使用時の動作ではおもに上肢の筋放電量が高くなった。これらの結果,未使用時には移動のために被介助者の身体を浮かせる必要があるが,スライディングシートを使用するとベッドと被介助者の間の摩擦を減少させ被介助者の身体を浮かすことなく滑らせることができるためであると考えられた。さらに,筋放電量からみると介護者の負担が最も少ないのは85cmに調整し、スライディングシートを使用した場合であった。 Ⅲベッドから車いすへの移乗動作の評価 移乗動作時の筋電図波形を測定したが、介護動作中は常に傍脊柱筋の放電がみられた。また、介護経験者は上肢の筋に活動が見られない局面があったが、介護未経験者では上肢の筋放電が見られるものが多かった。介護労働者の介護歴が短くなるにつれて上肢の筋活動が見られた。これまでのモーションキャプチャーでは動作解析に限界があったが、本年度より、新たなソフトを用いて、重力評価、映像分析を加えて解析する。
|
今後の研究の推進方策 |
介護労働軽減プログラムの評価に対して、これまで表面筋電図だけでの解析を行ってきたが、今年度は加速度と心拍数の変化量の分析を加えた。その結果、スライディングシートを使用し、ベッドの高さを高くすることで、加速度が高まり、平均心拍数が低くなる傾向が見られた。これらの結果をさらに論理づける実験として、次年度には、新たなソフトを用いて、重力評価、映像分析を加えて解析する。 心拍数測定:これまで測定していた最大心拍数、平均心拍数だけでなく、心拍数は、心臓自律神経系活動によりその増減を調節されている。心臓自律神経系活動の解析方法としてトーンエントロピー法を用い、安静状態を保つ副交感神経の優位について評価することが可能である。今年度は介護労働者の労働時間中の心拍数を測定することで介護労働の精神的負担量を評価する。 重力評価:これまでのモーションキャプチャーの動作解析だけでなく、重力加速について介護労働者の腰部負担について評価する。同時にワイヤレス筋電図を装着し、身体的負担量を数量化する。 介護施設評価:オーストラリアの施設の監査項目は4つの分野で44 の項目(Accreditation Standards)を満たす必要がある。その監査項目にはスタッフ教育や入居者の発言機会,入居者の生活スタイル,生活環境,介護職員の労働環境と安全性の内容が含まれる。それにより,サービスの質や介護職員の健康も守られている。わが国もこのような監査の視点を設け,サービスの質と介護労働衛生安全がともに向上する工夫が必要である。介護サービスの質の向上と介護職支援の具体的な改善について豪日の施設監査基準について比較検討を行う。
|