研究課題/領域番号 |
15K08827
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研究機関 | 天理医療大学 |
研究代表者 |
岩本 淳子 天理医療大学, 医療学部, 教授 (80290435)
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研究分担者 |
大林 賢史 奈良県立医科大学, 医学部, 助教 (30596656)
中川 利子 天理医療大学, 医療学部, 助手 (90635096)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 病院内転倒 / 病床の明るさ / 高齢者 / サーカディアンリズム / 在院日数 / 入院医療費 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、病床の明るさによる転倒や病気の回復過程への影響を明らかにすることである。27年度は、窓側・廊下側病床で日中照度を各季節で比較し、窓側・廊下側病床間の明るさの差を定量的に明らかにすることであった。 当初の計画で予定されていた病床の明るさを測定することができた。測定期間は、平成27年6月29日~平成28年4月22日で、夏至・秋分の日・冬至・春分の日の前後1か月を夏季・秋季・冬季・春季の代表とし、調査病院の3階・4階病棟の4人部屋(計26室)の病床照度を測定した(季節ごとの測定日は以下の通りで、前半は3階病棟、後半は4階病棟の測定期間を示す。夏季: 6月29日(月)~ 7月24日(金)、7月24日(金)~ 8月21日(金) 、秋季:9月 3日(木)~10月 2日(金)、10月 2日(金)~10月30日(金)、冬季:11月24日(火)~12月25日(金)、12月25日(金)~ 1月29日(金)、 春季: 2月23日(火)~ 3月18日(金) 3月18日(金)~ 4月22日(金)) 1病室では窓側病床1床と廊下側病床1床の合計2床を照度測定の対象とした。測定は病床の枕元に高さ100 cmで設置した照度計(LX-28SD, 佐藤商事)により、1分間隔で30日間連続測定した。日中平均照度は起床時刻である午前6時から就寝時刻である午後9時までの平均照度とした。季節の違い、窓の方角(北西5病室、北東2病室、南西4病室、南東2病室)による日中平均照度の違いを検討した結果、季節や方角にかかわらず、窓側病床は廊下側病床より日中平均照度が有意に高かった(382.3 lux vs. 135.0 lux)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究初年度である平成27年度の目標は、病床の明るさ調査を実施し、窓際病床は廊下側病床に比べて季節や病室の方角によらず日中平均照度が高いかを明らかにすることであった。測定時期は、春分・夏至・秋分・冬至の前・後30日間の合計240日間に、3階・4階の4人部屋の各13病室の窓際・廊下側病床の照度を測定することができたことは、当初の計画通りに研究が進んでいると考えられる。また、本研究の成果を2つの学術会議で発表することができたことは評価できる。一方で、研究分担者・協力者の退職および移動に伴い、10名の患者調査及び前向きコホート調査の滑り出しが遅れたことは今後改善すべきである。
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今後の研究の推進方策 |
次年度の目標は、患者調査と前向きコホート研究である。初年度の調査により窓側病床の方が廊下側病床よりも日中平均照度が高いことが明らかになったが、実際に入院する患者は病室内移動可、病棟内移動可、外出可能などの幅広い安静度がある。入院患者の光曝露量は安静度やADLにより大きく変化するため、患者抽出調査で窓側病床入院と廊下側入院の患者に腕時計型照度計(Actiwatch 2, Respironics, 米国)を装着して光曝露量を実測し、光曝露情報の妥当性を検証する予定である。また、窓側病床では廊下側病床より入院患者の病院内転倒発生が少ないか・在院日数は短いかを検証するための前向きコホート調査を本格的に開始する予定である。すでに新しい研究協力体制の下では、これらの研究のプロトコルについて承認を得ており、今年度計画的に実施することで目標達成は可能と考える。
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次年度使用額が生じた理由 |
診療情報を二次利用するための方法論について定期的な検討を進めてきたが、電子カルテのデータベースシステムの理解に時間を要したこと、研究分担者・協力者の退職・移動に伴い、年度末から年度初めにかけて定例会議が中断したため、情報収集機能を稼働させるまでに至らず、余剰金がプラスとなった。
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次年度使用額の使用計画 |
既存の医療情報を本研究のデータベースへCSVファイルとして出力するシステム構築のために経費を使用する予定である。
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