我が国における自殺者数は約2万人、世界では約80万人である。こうした自殺者の7割以上が自殺前にプライマリ・ケア医(我が国では主に内科診療所がこの役割を担う)を受診する。あるメタアナリシスではプライマリ・ケア受診者の約2割がうつ病であり、このうち医師によりうつ病と診断されたのは約半数であった。これまでにも内科診療所ではうつ病が見逃されやすいことが、繰り返し指摘されてきた。また、大うつ病患者の約6割が希死念慮(死にたいという気持ち)を有していたという報告もあり、自殺予防における内科診療所の役割は重要である。しかしながら、内科診療所受診者のうち、どのような人が希死念慮を伴ううつ状態を発症しやすいかについては、未だ明らかではない。 本研究では、内科診療所の初診患者、または過去6か月以上受診していない患者のうち、35~64歳を研究対象とした。診察前に自記式調査票を使用し、性別、年齢、体重、婚姻状況、職業、生活習慣、睡眠状況、教育歴、基礎疾患、入院歴等を調査した。主訴、診断名についての情報は、医療機関より得た。そして、登録時と半年後にうつ状態、希死念慮の評価を行った。初診時に598人を登録し、登録時にうつ状態または希死念慮を認めた者を解析対象から除外した。そして、希死念慮を伴ううつ状態の発症に関連する症状や特性について検討した。内科診療所における診察で、希死念慮を伴ううつ状態の発症が予測できれば、自殺予防に役立つと考えられる。 当該年度は希死念慮を伴ううつ状態の関連要因についての論文を作成した。
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