研究課題/領域番号 |
15K08830
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研究機関 | 十文字学園女子大学 |
研究代表者 |
加藤 則子 十文字学園女子大学, 人間生活学部, 教授 (30150171)
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研究分担者 |
澤田 いずみ 札幌医科大学, 保健医療学部, 准教授 (50285011)
柳川 敏彦 和歌山県立医科大学, 公私立大学の部局等, 教授 (80191146)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 子育て支援 / 地域 / 育児不安 / 養育困難 / 親プログラム / 虐待予防 / 不登校 / 非行 |
研究実績の概要 |
平成27年度においては、取組の浸透と評価を把握してゆくうえでの論点をヒアリングや文献レビューによって整理した。取り組みの浸透には、これまで積み上げてきたネットワークづくりと街づくりが重要であり、支援を必要な親に届ける上では、ニーズ把握と、届ける対象と出会えること、届けるための仕組みづくりとその継続性等が重要であることが分かった。取り組みが実践出来てゆく要件としては、自治体側で財源を用意できるか、支援の実際を届ける人を確保できるか、受け手がプログラム等にアクセスできるか、参加できるか等が明らかになった。さらに、住民がどうカバーできたのかを把握してゆくことが論点となり、取り組みの効果を評価するにあたっては、政策決定者に説得力があるような項目が重要となる事が分かった。これまでは、親自身の主観的な評価が主な効果指標として明らかにされてきたが、児童虐待件数、非行件数、不登校件数等が目に見えた効果として説得性がある指標であり、そのようなデータがどこにあるか、アクセスの方法などが問題となる。これらの基礎情報をもとに、4つの自治体にヒアリングを行った。4つの自治体において、子育て支援ニーズが強く感じた行政スタッフが親支援プログラムに出合い、予算取りを行ってゆくプロセスが明らかになった。安心こども基金の果たした役割が大きかったことが明らかとなった。評価指標の入手方法としては、行政報告を行う内容は、自治体がホームページに載せていることが明らかとなった。福祉関係では要保護児童数、虐待相談件数、不登校や非行相談は教育委員会の報告が活用できることが分かった。これらは、報告方法が変わることで年次推移が捉えにくい場合もあるが、細目などを精査することにより実態の把握に近づける。保護者に届けたプログラムの数については、自治体で把握できたので、今度必要とする親の数の把握と対照してゆけることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度に計画されていたことは、一部を残す形で実施することが出来た。対象地域の選定については、人口規模5万から10万の自治体を4か所選定できた。一方で1万、20万、100万の規模の自治体の選定が次年度の課題となった。同年度予定されていた養育困難児の発生率の算定においては、支援対象児の選定方法を4つの自治体から聞き取ったことで、発生率算定法やそのモデル化の考え方をある程度進めることができた。親支援ツールの実態把握については、対象自治体でほぼ計画通りに聞き取ることができた。さらに平成28年に計画されていた課題について一部実施することが出来た。どのような問題を抱える親にどのようなツールを提供できるかに関しては、聞き取り調査によってかなりの達成度の情報把握が出来た。各支援ツールの必要提供量の算定や育成すべき人材数の算定に関しては現行の提供状況や人材育成数について、対象自治体で把握した。各自治市でどのような算定根拠で支援提供や人材育成が行われたかを把握したことにより、算出モデルに関して考察を進めることができた。このように、平成27年度計画が一部積み残しになった一方、平成28年度計画の一部が実施できたことから、おおむね順調に進展していると判断された。
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今後の研究の推進方策 |
地域で取り入れられている親支援ツールの実態把握については、各地域で実践されている親支援プログラムについて情報を収集が収集できている。またどのような問題を抱える親にどのようなツールが提供できるか、その組み合わせについても、レビュー研究等によって明らかになった。これを市町ごとに現場の実態に合わせて養育問題の深刻度と質を勘案し、各ツールの特性を考慮したうえで、届けてゆく方策について検討する。一年度目においては、検討対象とした自治体が人口5万から10万のものに限られていた。人口1万、5万、10万、20万、50~100万など、様々な対応の自治体を検討する計画となっているので、平成28年度には対象自治体をさらに増やし、支援体制構築において異なる枠組みが必要となるかどうかについて考察する。対象地域における幼児期の養育困難児の発生率の算出が手の付いていない課題である。養育困難児の発生率を知るための指標尺度の吟味、サンプリングおよび調査の施行と調査結果からの発生率の算出等を、自治体の協力を得て乳幼児健診等の場を活用し検証してゆく。養育困難のタイプと紐付された各親支援ツールを、各種の養育困難の発生率を考慮することによって、必要量を算定する。各プログラムを届けるために実際育成された人材の数については対象自治体については明らかになっているが、必要量提供のためにどれだけ育成すべきであるかはよくわかっていない。必要充足のために新たに育成すべき人材の数の算定しその推計をおこなってゆく。地域全体での効果判定の方法については一年度目に公開データを拾ってゆく方法が明らかになった。そこから発展して、平成28年度には各ツールの提供により生じた効果について、各ツールに必要な費用との対比において効果を評価してゆく方法を開発してゆく。平成29年度にはあらゆる地域やツールの種類に敷衍できるように一般性を持たせてゆく。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究はおおむね実施計画に沿って実施されたが、養育困難児の発生に関する実態把握など一部今年度内に行われなかった部分があった。このため、研究経費の使用が申請額を下回っている。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年のdにおいては、親支援プログラムの地域におけるパイロット的な人材育成と実施、評価を行うため、ファシリテータ育成に関する費用(謝金)など、一定額の研究費使用が生ずる。このため、研究費消化が十分に行われることが見通される。
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