研究課題/領域番号 |
15K08830
|
研究機関 | 十文字学園女子大学 |
研究代表者 |
加藤 則子 十文字学園女子大学, 人間生活学部, 教授 (30150171)
|
研究分担者 |
澤田 いずみ 札幌医科大学, 保健医療学部, 准教授 (50285011)
柳川 敏彦 和歌山県立医科大学, 保健看護学部, 教授 (80191146)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 親支援プログラム / SDQ / 効果評価 |
研究実績の概要 |
平成27年度においては、文献レビューによって地域において支援ニードのある親子を数量的に把握し、必要量の支援を届けている海外における実績を整理した。人口5万~10万程度の4つの自治体にヒアリングしたところ、必要な支援が届けられてゆくために必要な要素として、自治体側で財源を用意できるか、支援プログラムを届ける人を確保できるか、受け手がプログラム等にアクセスできるか、参加できるか等が明らかになった。また、子育て支援の取り組みの長期的効果を見てゆくには政策決定者に説得力があるような項目が好ましく、行政報告を行う自治体がホームページに載せている福祉方面では要保護児童数、虐待相談件数、教育方面では不登校や非行相談は教育委員会の報告が活用できることが分かった。これを受けて平成28年度には、前年度実施できなかった規模の自治体にヒアリングを行った。人口54万の東京都内自治体で聞き取ったところ、大規模な自治体では届けるべき対象が多数で広範囲に在住しているための困難が浮き彫りとなっていた。ヒアリングを行った5つの自治体に関して、すでに候補となっている長期効果の評価のための指標をweb上で収集した。毎年の公表結果を収集することは出来るが、推移を読み取って支援事業の効果の判定につなげてゆくのには、課題が多かった。人口規模に応じてばらつきが見られ、年次推移が読み取りにくく、また、推移がいかなる予防活動の効果であるかを論ずるには材料が不十分であった。説得性があって長期効果が把握しやすい指標を見つけ出してゆくための工夫が必要である。各支援ツールの必要提供量の算定に関し、算出モデルはすでにできているが、地域で実地の計算に不可欠である、地域の小児のメンタルヘルス指標であるSDQ(子どもの強みとむつかしさに関する指標)調査が必要である。次年度にそれを行うための、アンケート調査票を完成させた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
モデル地域の選定において、前年度、20万~100万の規模の自治体の選定が積み残されたが、人口54万の東京都内自治体を聞き取り対象とすることができ、人口規模のバランスをより良い状況に近づけることが出来た。育児支援事業の長期効果が把握できて行政にも効果的であることがアピールできる指標を前年度までに見当をつけていたが、これについてweb上で検索して各自治体について各年につき詳細に収集できたことで、平成28年度における前進は明瞭であったと言える。収集したデータは地域ごと指標ごとにグラフ化することにより、情報を可視化することが出来たことで研究が進展した。各支援ツールの必要提供量の算定や育成すべき人材数の算定モデルを現場で応用してゆくためには、実際に問題のある親子の割合を地域で明らかにしてゆかなければならない。翌年度に調査を行う上での下準備として、地域の小児のメンタルヘルス指標であるSDQ(子どもの強みとむつかしさの指標)調査を行うための、アンケート調査票を完成させた。これらが実施できたことで、研究はおおむね順調に進行していると言える。
|
今後の研究の推進方策 |
各地域で実践されている親支援プログラムについて情報を収集することにより、地域で取り入れられている親支援ツールの実態把握がされている。またどのような問題を抱える親にどのようなツールがより効果的であるかの組み合わせについても、レビュー研究等によって明らかになっている。これを市町ごとに現場の実態に合わせて養育問題の深刻度と質を勘案し、各ツールの特性を考慮したうえで、届けてゆく方策について、1年度目と2年度目をかけて人口5~10万、20 ~100万など、様々な規模の自治体をモデル地域として検討が進められた。ヒアリングを進める中で、親支援プログラムの実施によって得られた効果を、より包括的な長期効果として、行政の意思決定者等も説得してゆける形で提供する必要が明らかになったため、行政報告として公表されている指標をweb上で収集し整理分析した。費用対効果を論ずる上で重要な進展となった。対象地域における幼児期の養育困難児の発生率の算出が2年間で手の付いていない課題である。養育困難児の発生率を知るための指標尺度の吟味、サンプリングおよび調査の施行と調査結果からの発生率の算出等を自治体の協力を得て乳幼児健診等の場を活用し検証してゆく。具体的にはすでに調査票が完成されているSDQ(子どもの強みとむつかしさの指標)の値の分布を実施の地域で明らかにしてゆき、量的な検証を行うのが3年目における大きな山場となる。アンケート調査によって得られたSDQの値が高く支援が必要と考えられる子どもの割合をもとに、必要充足のために新たに育成すべき人材数の算定をしその推計をおこなってゆく。さらにこれらの知見をあらゆる地域やツールの種類に敷衍できるように一般性を持たせてゆく。
|
次年度使用額が生じた理由 |
文房具で、研究目的に沿うものが見つからなかったため購入を中止したことにより次年度使用額が生じた。
|
次年度使用額の使用計画 |
研究計画を微調整し、昨年度購入できなかったもの(文房具等)について使用することとする。
|