研究実績の概要 |
文献レビューによって地域において支援ニードのある親子を数量的に把握し、必要量の支援を届けている海外における実績を整理した(平成27年度)。人口5万~10万程度の4つの自治体と人口54万の大規模な自治体にヒアリングしたところ、必要な支援が届けられてゆくために必要な要素として、自治体側で財源を用意できるか、支援の実際を届ける人を確保できるか、受け手がプログラム等にアクセスできるか、参加できるか等が明らかになった(平成27,28年)。また、子育て支援の取り組みの長期的効果を示すような説得力がある評価指標項目が好ましく、自治体が行政調査結果としてホームページに載せている福祉関連の要保護児童数、虐待相談件数、教育関連の不登校や非行相談等の報告が活用できることが分かった。5つの自治体に関して、これらの指標をweb上で収集した(平成28年度)。人口規模に応じてばらつきが見られ、年次推移が読み取りにくかった。また、推移がいかなる予防活動の効果であるかを論ずるには材料が不十分であった。 平成29年度には、A市内で行われている3歳児健診を受診した児の保護者に、地域の小児のメンタルヘルス指標であるSDQ(子どもの強みとむつかしさに関する指標)調査を行った(平成29年度)。約3か月かけて500件の調査票を配布したところ157件からの回答があり、13件8.2%の3歳児が、何らかの対応を必要とする臨床域にあることが分かった。この結果をもとに支援が必要な例は年間112人と試算され、グループプログラムの提供必要量は年間10回となる。A市では問題例をプログラムにつなげるためのシステムが充分働いておらず、ファシリテーターも近隣の市に1名いるに過ぎない。A市では、怒鳴らない子育て講座がすでに年間数回開催されているので、それによってある程度カバーされているものの、提供量が必要量より大幅に少ないことが明らかとなった。
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