研究課題/領域番号 |
15K08835
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研究機関 | 国際医療福祉大学 |
研究代表者 |
高橋 和郎 国際医療福祉大学, 大学病院, 教授 (10171472)
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研究分担者 |
左近 直美 大阪府立公衆衛生研究所, 感染症部, 主任研究員 (50291216) [辞退]
上林 大起 大阪府立公衆衛生研究所, 感染症部, 研究員 (50622560) [辞退]
原田 哲也 大阪府立公衆衛生研究所, 感染症部, 主任研究員 (70516723) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 病原微生物 / Qプローブ法 / 感染症診断 / 迅速 / 網羅的 / 高感度 / 血流感染症 |
研究実績の概要 |
平成28年度は血流感染症の原因微生物の高感度迅速PCR法の確立と臨床応用について研究を行った。血流感染症は敗血症に進行すると致死率が高くなり、迅速な原因菌の診断と適切な抗菌薬の使用が予後の改善に重要である。本研究では血流感染症の原因菌の大部分(22種)を迅速(2.5時間以内)にまた高感度に(多くは10コピー/テスト)検出するPCR法を作製した。また薬剤耐性菌の耐性遺伝子(mecA, CTX-M, SHV, TEM)を同時に検出した。培養同定法により診断された53名の血流感染患者において、新規本PCR法により49例(92.4%)で診断結果が一致し、薬剤耐性菌の一致率は80%(4/5)であった。血液培養開始から起因微生物と薬剤耐性の結果が判明するまでの所要時間は、本PCR法では培養法と比較して平均32-37時間と有意に短縮し、培養開始し翌日には結果が判明し、適切な抗菌薬の使用が可能となった。実際、53名の患者の約20%では不適切な抗菌薬が使用されており、より有効な抗菌薬に変更された。本研究により適切な抗菌薬の使用が従来法に比較し約1-2日早期に変更可能となり、患者の予後の改善、致死率の低下に大きく貢献できると考えられる。 本PCR法を用いてマイコプラズマ.ニューモニエのマクロライド抗菌薬耐性率を経年的に調査しているが、最近1-2年はこの耐性率が以前の80-90%から50%程度まで低下していることが判明した。この事実によりマイコプラズマ感染症と診断された場合の抗菌薬は第一にマクロライドを使用する考え方で問題ないと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
遺伝子検査が可能となった対象の微生物は血流感染症22菌種、呼吸器感染症8種、中枢神経感染症3種で、ほぼ計画通りに進行している。血流感染症は現在、陽性検体70例を解析し、本方法の性能、有効性の評価を終え、成果を学会で発表し、論文投稿を準備中である。
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今後の研究の推進方策 |
1.血流感染症に関する研究では、患者症例数を増やし本PCR法の性能の評価と臨床応用における有効性をより詳細に評価する計画である。また、検出することが望ましい薬剤耐性遺伝子の検出系を新たに作製することも挑戦する。 2.呼吸器感染症の原因微生物の検索については、さらに対象微生物の検出系を作製し、臨床検体に応用し、その性能を評価する。 3.本邦で分離同定された報告がないマイコプラズマ.アンフォリフォルメを初めて分離同定したが、日本における本菌に対する疫学情報は皆無であるので、市中におけるその感染状況や抗体の保有率などを検討する計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験補助員を1名雇用する計画で公募し、適任者を確保すべく努力したが、最終的に採用ができず当該助成金が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
H29年度も引き続き実験補助員を採用し、人件費として使用し、研究の進行を早めたいと考えている。
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