研究実績の概要 |
カルバペネム系抗菌薬はグラム陰性桿菌による感染症治療の「最後の切り札」として、臨床上重要な抗菌薬である。2012年の米国疾病センターの報告によると、過去10年間でカルバペネム耐性腸内細菌(Carbapenem-resistant Enerobacteriaceae: CRE)は1.2%から4.2%に増加し、特にクレブシエラ属では1.6%から10.4%と急増している。CREは血液中に侵入するとエンドトキシンを産生し、ショックや多臓器不全を引き起こす。CREの国内における疫学は、輸入例を中心として散見され、分離頻度は欧米と比較し低いと考えられていたが詳細は明らかではない。本年度は国内のCREの疫学及び耐性遺伝子保有状況を明らかにすることを目的とした。
2004年4月1日から2013年3月31日までの期間に検出された腸内細菌(27,956株)の内、大腸菌の0.21%、クレブシエラ属の1.4%、シトロバクター属の5.0%、セラチア属の7.0%、セラチア属の7.7%、エンテロバクター属の10.8%、がCREの定義を満たし、これまでの国内の報告と比べ高率であることが判明した。また検出部位は尿32%、呼吸器系30%、腹腔内16%、創部15%、血液3%、血管内カテーテル2%、生殖器系2%であり、欧米の報告と比較すると尿、呼吸器系検体での検出が多い傾向が認められた。現在国内においてもCREの病院内でのアウトブレイクの報告が相次いでいる。上記の検体の取り扱い時には厳重な接触感染対策を行うことが必要と考えられた。また、これらのCREの中で既知の耐性遺伝子(IMP, VIM, KPC, NMCA, OXA, IMI, NDM)保有株を遺伝子解析により除外したところ、Class A型のKPCやD型のOXA型とシークエンス上の相同性が比較的高い新型のカルバペネマーゼ産生株が6株認められた。今後これらの新型カルバペネマーゼ及び新規治療ターゲットの解析を行っていく。
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