国民の医療の質への関心の高まりに対応して、DPCデータなどの医療業務データを用いた医療の質評価が広まってきている。本研究では、我が国で過去5年間に多くの医療機関で実践された医療の質評価とその公表等の医療の質改善への反映を検証した。1323急性期病院から退院患者および外来患者の匿名DPC調査データを収集しデータベースを構築した。診療ガイドライン等に基づく術後抗菌薬使用、予防的抗凝固薬使用、早期リハビリテーション等のプロセス指標を算出し、個別医療機関のパブリック・リポーティング(医療の質指標の公表)の状況と比較した。 平成28年度はあらたに収集したデータを追加して、分析結果の再現性を検証するとともに、初年度の分析を引き続き継続した。特に、指標間の効果の違いと医療者の行動変容等に関する詳細な分析は、時間を要するため、平成28年度以降も解析を続けることとした。同様に、医療機関属性の影響についても、分析視点を追加して、引き続き検討を進める。併せて、これらの分析を通して、既存の評価指標の問題点等を検討して、医療の質をより適切に評価できる医療評価指標の改善につながる条件等を明かとするための分析を行った。また、大動脈瘤、Still病等の臨床疫学、アウトカムに影響を与える要因等を分析し、医療の質を評価しうるあらたな指標の開発とそれらを公表することによってどのような影響があるかを検討した。さらに、がん緩和治療や終末期医療での適切な医療を評価するための指標を検討するために、がん終末期の化学療法の実態や緩和治療がそれらに与える影響等を分析して、論文に報告した。
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