研究課題/領域番号 |
15K08840
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
佐藤 公 山梨大学, 大学院総合研究部, 准教授 (30252026)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 消化器内視鏡 / 感染制御 / 院内感染 / 洗浄消毒 / 多剤耐性菌 |
研究実績の概要 |
内視鏡を介した感染事例については引き続き医療事故報告、論文報告を対象に集積を継続した。内視鏡関連ガイドラインの普及に合わせて内視鏡を介したヘリコバクター・ピロリ菌感染の報告は減少し、内視鏡の種別でも上部・下部消化管内視鏡検査によるものは減少していることが明らかとなった。その結果を学会誌等で報告した。 一方で、近年、海外を中心に十二指腸内視鏡を介した多剤耐性菌の感染事例が多く報告されている。文献的な解析から、十二指腸内視鏡は複雑な構造を有しており他の内視鏡に比較して十分な洗浄および消毒が困難なこと、多剤耐性菌の頻度増加により感染が顕在化したこと、PODなどの分子疫学的解析法が感染管理に広く導入されたことにより院内感染として認識されるようになったことなどが背景にあることが明らかとなった。これらの明らかとなった背景からは、複雑な構造を有する内視鏡の再生使用は極めて慎重かつ専門的な医療対応が必要であること、さらにこうした感染がこれまでも潜在していた可能性を示している。 再生使用が避けられない内視鏡における感染対策は多岐にわたるが、その中心は適切な洗浄と消毒にあり、人的な作業過程と機械化された過程が存在する。そのそれぞれに有効性の担保が求められるが、影響する様々な要因の存在が知られている。今回の検討から、自動洗浄装置に用いられる消毒薬の有効性の経時的劣化の程度が多数の機器で明らかとなり、人的な要因である洗浄についても一定の手法での洗浄効果が蛋白濃度を指標として定量的に確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
文献的な感染事例の調査・集積は終了しており、その後の報告については随時追加する方針である。上部・下部消化管内視鏡の洗浄・消毒について、汎用されている自動洗浄装置をもちいた消毒では、消毒薬の濃度の低下が経時的に確認されており、様々な環境下で、安全域を設けた有効期間の設定の確認を進めている。 内視鏡の洗浄についても、一定の手順を定めて行うことにより、蛋白濃度を指標としたインジゲーターの設定について検討を進めている。これまでの検討では概ね妥当と考えられる洗浄効果が得られている。結果については当施設だけでなく、他施設における再現性も含めて評価する予定である。 これまで得られたデータをもとに、消化器内視鏡の感染制御に関するeラーニング教材の作成も進めている。
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今後の研究の推進方策 |
これまで得られた結果を踏まえ、消化器内視鏡の感染制御に関する教育資材を完成する。 また近年、報告が増加している十二指腸内視鏡を介した感染については今年度ぎりぎりまで情報の集積を継続し、情報を随時発信するとともに、上記教材にも盛り込んでゆく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究結果を踏まえた消化器内視鏡の感染管理に関する教育コンテンツの作成に時間を要している。進行中の検討や最新のデータを含めたものとして、専門の業者にコンテンツの制作・修正を依頼中であり、コンテンツの内容・量により支出の増加が予想されるため次年度までの使用額を残したものとなった。
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