本研究は,新生児集中治療室(NICU)においてグラム陰性桿菌が伝播(拡大)していく過程を微生物学的ならびに遺伝学的に明らかにし,また,児から分離されたグラム陰性桿菌の抗菌薬耐性と抗菌薬使用との関連を解析することにより,グラム陰性桿菌のNICU内伝播の制御法(医療関連感染対策および抗菌薬使用法)を見出すことを目的とするものであり,NICU内の環境の中で8カ所を定点として設定し,概ね1週間ごとにスワブを用いて拭き取り検体を採取し,微生物学的検査により児から分離された菌と同一の菌の検出の有無を追跡し,遺伝学的手法を併せて解析を行った。これまで,平成27年度はセラチア(Serratia)属菌が検出された1事例と緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)が検出された1事例の2事例について,平成28年度は大腸菌(Escherichia coli)が検出された1事例とP. aeruginosaが検出された1事例の2事例について解析することができた。平成29年度からは,研究期間を1年間延長したものの,学内施設・設備の大規模な改修工事ならびに研究室の移転が生じ,必要な実験機器などの利用が大幅に制限されたことに加え,移転後の機器類の破損等も多く生じ,これらにともなう業務により,研究を実施することができなかった。
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