研究課題/領域番号 |
15K08848
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
久原 太助 高知大学, 医学部附属病院, 臨床検査技師 (80457407)
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研究分担者 |
杉浦 哲朗 高知大学, 教育研究部医療学系臨床医学部門, 教授 (50171145)
片岡 浩巳 高知大学, 教育研究部医療学系連携医学部門, 助教 (80398049)
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研究期間 (年度) |
2015-10-21 – 2018-03-31
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キーワード | 蛋白電気泳動 / 蛋白分画波形 / 褥瘡 |
研究実績の概要 |
血液中の微量元素である亜鉛は褥瘡と密接に関係し、蛋白電気泳動波形から褥瘡の発生を予測することが可能であるかを検証した。褥瘡は患者の栄養状態や介護の状態等が大きく影響し、一般的にNSTの活動では、Braden Scaleを用いた方法が用いられるが、客観性に欠ける問題があった。蛋白分画波形から得られた情報から褥瘡発生リスクを検出し、予測が可能であるか調査した。 Sebia CAPILLARYS2 PROTEIN(E)6を用いた電気泳動の生波形を使用して正規化を行い、褥瘡が発生する1週間前の波形を陽性群(64件)、入院時の蛋白分画波形で一度も褥瘡が発生していない群を陰性群(7,642件)として用い、易動度の各点に対してROC分析を行った。波形は、ALBとα1分画の間の情報を除去しない生波形データを正規化し、易動度は、ALBピーク位置が75、DMF(dimethylformamide)が300となる易動度に補正した。その結果、β1ピーク位置が203となる。さらに、これらのデータを説明変数としてロジスティック回帰分析を行い、褥瘡リスクを検出する予測式を作成した。 Cuや炎症蛋白と相関が強いβ1分画のアルブミン側のテール位置(易動度200)が低下し、AUC =0.814となり、次いで、C4と相関が強いアルブミンのプレアルブミン側テール(易動度69)でAUC=0.789となった。α2のアルブミン側テールでは、Znと負の相関がある領域(易動度164)で、AUC=0.753の結果が得られた。 また、ロジスティック回帰式は、- 4.471 + 0.0251 * age + 0.0526 * P114 + 0.00244 * P163 - 0.0177 * P199 + 0.00233 * P216となり、AUC=0.876の結果を得ることができ、 総合的に予測した場合は、高い分離性能を有する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成27年度は、10月に採択内定を頂き11月から研究に着手したため、1年で計画したことを半年で完了させる計画を立てたが、やはり当初の予定を100%完了させることが困難であり、やや遅れている自己評価である。しかしながら蛋白分画検査の最適分析条件について、キャピラリ電気泳動装置の緩衝液および検出速攻波長について微量元素を含めたNST関連項目の同時検出における条件を設定が完了し、研究実績の概要に記述した内容の知見を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、血清中の微量元素である亜鉛を、蛋白電気泳動波形から推定可能かを検証する。まず、亜鉛の日内変動の有無や採血管種による亜鉛濃度への影響度を調査し、日常検査として提出された検体で調査が可能だるかを検討する。その上で、下記の事項を実施する。 1. 予測パラメータの導出:NSTの支援を必要とする患者群を対象として、蛋白分画検査と亜鉛、およびその他の関連検査項目検査を追加測定し、標準化した波形を説明変数とし、同時に測定された検査を目的変数として予測パラメータを導出する。データ数は300 件以上を目標とする。このうち200 件を学習データとし、予測パラメータを導出する。 2. 推定精度の検証:電気泳動から得られた推定値を検証するために、学習用データセットとは異なる無作為に抽出した検証用データセット100件を用いて、実測値と推定値を比較検証する。 3. 電子カルテに記録された半構造データのデータベース化:電子カルテの臨床経過記録や主観的包括的アセスメント(SGA) 、消化吸収機能の状態や、経腸栄養(EN)、静脈栄養(PN)の等の記録は、テンプレート形式で入力が行われており、そのデータは、半構造化形式で電子カルテのデータベースに記録されている。このデータを構造化形式に変換し正規化後、新たな研究用データベースを作成する。このデータベースに蛋白分画波形や、推定した検査値を展開し、それぞれの関係を容易に解析できるデータウエアハウスを構築する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度は、予備調査として過去に測定したデータをもとに解析したので、測定用試薬や消耗品の購入はなかった。その予備調査において新たな知見が得られ、平成28年度に国際学会で発表する旅費や参加費に充当する予定である。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度は、平成27年度の予備調査で得られた知見を国際学会で発表するための旅費に使用する。また、平成28年度には、予備調査で得られた知見を基に作成するデータベースの構築用システム購入と蛋白電気泳動装置で測定するための試薬や機器保守費用、および微量元素の測定用試薬購入費として使用させて頂く予定である。
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