研究課題/領域番号 |
15K08852
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
川上 洋司 大阪市立大学, 大学院工学研究科, 准教授 (90305615)
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研究分担者 |
佐藤 嘉洋 大阪市立大学, 大学院工学研究科, 教授 (00170796)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 院内感染管理 / 抗菌性金属材料 / 環境表面 / ステンレス鋼 / 銅合金 / 微生物制御 / 食中毒対策 / 殺菌 |
研究実績の概要 |
医療福祉施設における院内感染対策としての環境表面での病原性細菌制御を目的とし,表面汚損と清拭が抗菌性金属材料の抗菌性能に及ぼす影響について調べた. 試料には銅含有ステンレス鋼を用いた.タンパク質による表面汚損に対しては次亜塩素酸ナトリウム水溶液を用いた清拭を,油脂による表面汚損に対してはエタノール水溶液を用いた清拭を,それぞれ施すことにより,表面に付着した汚損物質は効果的に除去され,抗菌性ステンレス鋼の抗菌性能は清浄な表面での抗菌性能と同等なレベルまで回復することが示された. 同様の実験を無酸素銅を試料として行った.次亜塩素酸ナトリウム水溶液,エタノール水溶液,蒸留水いずれも油脂汚損の除去に効果的であり,汚損により低下した抗菌性能は清浄な表面と同等なレベルまで回復することが示された.また,薬剤を用いない乾式清拭も効果的であった. 長期間にわたり薬剤に曝されることによる無酸素銅表面の変化についても調べた.すなわち,薬剤への浸漬と乾燥を繰り返し施された試験表面に対し,その表面の抗菌性評価とXPSによる表面分析を行った.薬剤に繰り返し曝されると無酸素銅の表面は腐食され,銅の酸化物や塩化物をはじめとする種々の化合物で被われるようになった.このような表面状態の変化に伴い,無酸素銅の抗菌性能が低下する可能性が示唆された. また,より実用的な各種銅合金を試料とし,タンパク質により汚損された表面の抗菌性評価を行い,基礎的なデータを収集した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
タンパク質による表面汚損量と抗菌性金属材料の抗菌性能に及ぼす基礎的なデータの収集を終えた.タンパク質や油脂による表面汚損により抗菌性金属材料の抗菌性能は低下するが,適切な清拭を施すことにより,汚損物質は表面より除去され,抗菌性能は清浄な表面の値にまで回復させることが出来ることが示された. また,繰り返し薬剤に曝されると無酸素銅の表面は複雑な化合物による皮膜で被われ,抗菌性が低下する事が示された.この皮膜の分析を試みているが,まだ十分な結果が得られておらず,今後,この化合物の詳細な分析が必要である. 1年目からの課題であった清拭後の表面に残留する油脂汚損の定量化が行えていない.残留する油脂が微量であることが原因であると考えている.残留油脂汚損の定量方法について確立する必要がある. 以上のことを鑑みると,当初の計画よりもやや遅れている.
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今後の研究の推進方策 |
残留油脂汚損の定量的評価法:拭き清掃後の試験片表面に残留する油脂を必要な精度での定量を紫外可視近赤外分光法,その他の手法により試みているが,十分な精度では行えていない.引き続き検討する. 拭き清掃後の金属表面性状:薬剤に曝されることにより抗菌性金属材料表面に形成される化合物の分析を進め,化合物が抗菌性能に及ぼす影響,化合物を制御する清拭方法について検討する.また,タンパク質による汚染,油脂による汚染のどちらに対しても有効に作用する薬剤および清掃方法について検討する.適切な薬剤を薬剤の検討に際しては界面活性剤の効果についても検討する.
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