研究課題/領域番号 |
15K08864
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研究機関 | 独立行政法人国立病院機構(東京医療センター臨床研究センター) |
研究代表者 |
松村 真司 独立行政法人国立病院機構(東京医療センター臨床研究センター), 臨床疫学研究室, 研究員 (90323542)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ケア移行 / 老年医学 / プライマリ・ケア |
研究実績の概要 |
これまでに国内外で行われたケア移行時の概念上の整理と、ケア移行時に発生する健康アウトカムへの影響について文献収集とリビューを行い、これらについて現在総説論文を学術誌へ投稿中である。本リビューでは特に病院から診療所外来に退院した患者のケア移行における概念を整理すると同時に、これらにおいて望ましくない患者アウトカムが高頻度に発生していること、また関連する施設間においてコミュニケーションが行われていないことを明らかにした上で、これらに関する知見を整理し論じている。 また、27年度に行われた脆弱高齢者の入退院時に必要とされる診療情報提供書フォーマットに関するフォーカスグループインタビューから得られたデータを分析の上、入院時にとりわけ必要な情報および退院時に必要な情報について結果を整理した。現在これらについては学会発表および論文投稿に向け準備中である。またこれらの研究から得られた知見を反映させ、さらに複数の医療・介護関係者らからの助言を得た上で、患者基礎情報、移動・排泄・食事接種などのADLならびに生活環境情報、それまでの病状の説明内容、担当医の考える今回の入院における治療目標、および急変時における患者・患者家族の考えについて伝えたいこと、から構成されている標準ケア情報提供書(入院用)を開発した。 さらに今回開発した標準ケア情報提供書(入院用)を介入に用いたクラスタ―・ランダム化比較研究の研究計画を策定した。これは、国内20か所の協力研究施設を通じ、それぞれの施設における要介護2以上の在宅脆弱高齢者を対象とした、患者家族の入院満足・入院時の体験、医療資源の使用、入院先とのコミュニケーションをアウトカムとした単盲検介入研究である。これらのプロトコールは倫理委員会における承認が得られ、平成29年5月より開始される予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
国内外の先行研究のリビューは現在論文を学術誌に投稿中である。 フォーカスグループによるデータ分析は終了し、今後これらの結果をまとめ学会発表・論文化していく予定である。 標準ケア情報提供フォーマットは入院用については策定されたが、退院用のフォーマットは今年度に開発していく予定である。 当初の計画では開発された標準ケア情報提供フォーマットを介入として用いたクラスター・ランダム化比較研究を平成28年度に開始する予定であったが、研究計画の策定および倫理委員会における審査・承認に想定以上の時間がかかったため、当初予定した平成28年度内の開始ができず、平成29年5月より開始することとなり、当初計画よりこれらの進捗は遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに実施してきた文献リビューならびにフォーカス・グループ研究の結果分析から得られた知見について本年度は結果をまとめ複数の学会および論文を通じて発表していく予定である。また、さらにこれらの結果を用いて、退院用のケア情報提供書を作成し、これまでに開発した入院用と退院用の双方を公表し広く実地での活用を促していく予定である。また、その上でケア移行時の情報交換がどのように行われているか、引き続き知見を得ていく予定である。またクラスター・ランダム化比較研究の実行を進め、データが集積した時点で順次発表していく予定である。ただし予定より進捗が遅れているため、当初予定していた混合研究法は変更し、サーベイ調査のみを用いた量的研究へと研究計画を縮小し迅速に進めていく予定である。 また、入退院時のケア移行の際のコーディネートを行う地域におけるケア移行看護師を養成するための教育プログラムの開発とこれらによって訓練された看護師によるモデル運用を実施する予定にしていたが、ケア移行に必要な情報交換についての教育ツールの開発のみにし、迅速化していく予定である。併せて、ケア移行時における薬剤エラーや再入院などの望ましくない患者アウトカムの発生頻度について国内の施設における横断研究を行い、ケア移行時の国内のエビデンスの蓄積を研究の中心にしていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度に開始する予定であったクラスター・ランダム化比較研究の研究計画の開始が遅れたため。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年5月より介入研究を実施していく予定であるため、研究実施に関わる人件費および関連事務経費として計画的に使用する予定である。また、引き続きこれまでの成果を学術発表、論文作成を行っていく際の経費として使用する予定である。合わせて、ケア移行時の情報提供に関する教育ツールとしてのコンテンツ作成費用に使用していく予定である。また、実際のケア移行時にどのような望ましくないアウトカムが起こっているのかについて、協力医療機関において横断調査を行う経費として充当していく予定にしている。
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