研究実績の概要 |
熱中症の本態は、熱曝露による体表血流の増加に伴い、腸管が相対的虚血に陥り、腸管粘膜の透過性が亢進し、腸内細菌が流入することによって生じる高サイトカイン血症である。また、熱中症の予防には水分補給とともに各種ミネラルを摂取することが肝要である。そこで、我々は、熱曝露によるサイトカインへの影響と電解質摂取によるその効果について、熱中症モデルラットを用いて検討を行った。9週齢Wistar系雄ラットを用いて、sacrificeの1週間前から電解質飲料あるいは水を自由摂取させた後、ペントバルビタールを腹腔内投与し、加温箱(内部温度37.0℃)内あるいは保温マット上に90分間放置した。その後、血清を採取し、MAGPIX®を用いて、23種類のサイトカイン等の各種シグナル伝達物質(IL-1α, IL-1β, IL-2, IL-4, IL-5, IL-6, IL-10, IL-12(p70), IL-13, IL-17A, IL-18, EGF,Eoxin, Fractalkine, G-CSF, IP-10, Leptin, LIX, MCP-1, MIP-1α, RANTES, TNFα, VEGF)の測定を行った。その結果、熱曝露によりLIX及びRANTESには有意な減少が認められた。また、炎症反応における重要な役割を果たすケモカインであるRANTESも減少していた。したがって、本研究における熱中症モデルラットは、熱ストレスにより重篤な状態となり致死的な状態に陥っている可能性が考えられた。また、電解質飲料の事前摂取により、TNFαの上昇が抑制され、IL-1βの上昇とMIP-1の低下が得られ,細胞死を引き起こす変化に抑制が生じている可能性が示唆された。
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