研究課題/領域番号 |
15K08872
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
西村 明儒 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部, 教授 (60283561)
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研究分担者 |
石上 安希子 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部, 講師 (60359916)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | レクチン反応陽性球状沈着物 / D-neuron / TAAR1 / 老人斑 / tangles / schizophrenia / dementia / PTSD |
研究実績の概要 |
本年度は、法医剖検脳の海馬切片に対しレクチン染色を行い、歯状回分子層に球状沈着物が多く検出されたものに対し、ドパ脱炭酸酵素(dopa decarboxylase, DDC)とレクチン(DBA,GS-1-B4)、ssDNA(single-stranded DNA)を組み合わせて免疫蛍光二重染色を施し、その構成成分を検討した。平成23、24年に徳島大学医学部で行われた法医剖検例のうち、臨床的に統合失調症と診断されていた症例、認知症性脳変性疾患の病理所見を示す症例、自殺症例、脳損傷の症例、65歳以上の非認知症の症例に該当する63例の脳の海馬をホルマリンで固定後、パラフィン包埋し、5ミクロンに薄切した。その切片に対しレクチン(DBA,GS-1-B4)で免疫組織化学を行い、歯状回分子層における球状沈着物の検出数によりその染色性を評価した。その評価により、特にレクチンの染色性の高かった10症例に対し、DDCおよびssDNAの各抗体で蛍光二重染色を施し、共焦点レーザー顕微鏡 (Leica TCS NT) で観察した。 ssDNAはアポトーシスによる核の断片化により生じる。これまでの研究で、レクチンとssDNAはニューロンの部分的に崩壊した核の一部で共染されることが示されており、球状沈着物はニューロンのアポトーシスにより形成されることが明らかになっている。DDCとレクチンの共染性が認められたことから、球状沈着物はDDCを構成成分として含むことが示唆された。また、複数の症例で、核周囲にDDCとssDNAの共染が見られた。以上のことから、球状沈着物はドパミン合成を行うニューロンの核の崩壊、つまりドパミン作動性ニューロン、セロトニン作動性ニューロン、D-ニューロンのアポトーシスの過程で生じ、さらにアポトーシスが進行し核が完全に崩壊した結果、球場に凝集するものと考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は、既得検体および新規検体の全症例で、Gallias-Braakの鍍銀染色によるBraak and Braakの評価基準に基づく、病変の病理学的進行度を6段階に評価は、行ったが、蛍光二重染色による抗体間の共染性の有無については、比較的新しく検査した症例について検討したため、検討できた症例数が充分と言えないと考える。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は、既得検体について、蛍光多重染色を施し、共焦点レーザー顕微鏡で観察することによって、レクチン陽性球状沈着物におけるABO式血液型から適当と考えられるレクチン(A型はGSI-B4、B型はDBA、AB型はUEA-I、O型はGSI-B4またはDBA)ならびに抗コンドロイチン硫酸抗体と各種抗体(EpoR、NOS、CS、ApoE、GFAP、N-Cad、5-LG、GFAP、HSP70、タウ、vimentin、EAAC1、S-100など)ならびに、D-neuronに関係の深いTAAR1との反応を調べることによって、本沈着物と認知症性変性疾患における変性所見との関係を明らかにしたい。これまでの研究で、統合失調症では、ニューロン由来が主であるが、認知症では、グリア由来のものも少なくないことが明らかとなっており、さらに検索する抗原を増やして検討することを計画している。 一方、現実の鑑定では、常に良好な条件で検査を行えるとは限らないので、これまでの研究で一定の所見、成果の得られたレクチンや抗体について、死後経過時間の長さによって染色性がどれだけ低下するかを検討する。パラフィン切片を用い、蟻酸処理、オートクレーブ処理、マイクロウェーブ処理などの抗原の賦活化を行い、実用に耐える検査法を検討する。
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