研究課題/領域番号 |
15K08875
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
池松 和哉 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 教授 (80332857)
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研究分担者 |
山本 琢磨 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 講師 (50634458) [辞退]
梅原 敬弘 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 助教 (60617421)
坪井 貴司 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (80415231)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 長期ストレス / 過労死 / 高齢者虐待 / 長期ストレスマーカー / マウス / miR-142-3p |
研究実績の概要 |
ドメスティックバイオレンスや高齢者虐待等の「成人虐待」と称される新たな虐待が社会的にクローズアップされている。成人虐待は、児童虐待に比しマスメディアでの報道ははるかに少ないものの、潜在的なケースはかなりの件数にのぼると推定されている。今後、急速な高齢化社会の到来や「高齢者虐待防止法」による社会的な意識の高まりもうけて、法医実務において取り扱われる「成人虐待」症例数は著明に増加することは確実である。 ところで、法医実務で遭遇する成人虐待は、ある一定の期間(長期間)持続された「身体的虐待」や「ネグレクト」と考えられる。長期間持続した児童虐待の剖検例においては、福永らが報告した「胸腺の萎縮」が診断基準として汎用されているが、成人虐待の症例では、そのような特異的な法医病理学的診断マーカーは特定されていない。従って、「成人虐待」においても「児童虐待における胸腺の萎縮」のような、長期に亘るストレス暴露に対する生体の反応を剖検後の検査にて捉えることが法医病理の分野では肝要と考える。 研究者らは胸腺・脾臓に発現が顕著なことを明らかにしているmiR-142 familyがストレスに反応する生体物質の候補であることを推察し、さらに、組織学的にmiR-142 ノックアウトマウスにてハッサル小体の著明な増加が認められたことから、この現象にmiR-142 familyが関与していることを疑った。つまり、miR-142 familyは単なるストレス反応物質ではなく、長期ストレスのマーカーとなりうることが示唆されたことから、miR-142-3pについてマウスストレスモデル胸腺を用いて検討を行ったところ、長期ストレス群のみにて増加していた。従って、miR-142-3pがマウスにおける慢性的なストレス暴露を証明する法医分子病理学的診断マーカーであることを明らかにした。
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