研究課題
肺動脈血栓塞栓症における脂質メディエーター(LMs)動態への抗精神病薬の影響を調べるために、まず血小板凝集に関与するLMsのLC-MS/MS分析法について検討した。使用した機器(島津LCMS8040)における検出限界は6-keto-PGF1α,TXB2でそれぞれ約0.5pg、約2.5pgであった。血漿100uLを試料とした場合の定量限界は6-keto-PGF1αが約100pg/mL、TXB2が約250pg/mLであり、ラット血漿にそれぞれ200pg添加した場合の回収率は6-keto-PGF1αが75%、TXB2が104%、PGE2が87%、PGD2が64%であった。次に、非定型抗精神病薬のクロザピン投与後におけるラット血漿中のLMs濃度と凝固・線溶系マーカーを測定した。クロザピンをWister系ラット(各群n=5)に10mg/kg、1回/日、1週間あるいは2週間連続腹腔内投与後、血漿中の脂質メディエーター(LMs)濃度をLC-MS/MSで分析した。TXB2は全てのラットから検出されたが、その検出濃度は定量限界(250pg/mL)以下から175ng/mLまで極めて大きな個体差が認められ、クロザピン投与ラット群とコントロール群との間に有意な差は認めなかった。6-keto-PGF1αは抽出試料の濃縮操作後でもほとんどの試料で定量限界の100pg/mL以下であり、今回の分析条件でのラット血漿中の6-keto-PGF1αの定量分析は困難であった。また、ラット血漿の血液凝固能検査に於いてもLMsと同様に各群間に違いは認められなかった。2001年から2014年の法医解剖事例を検索して、薬物服用者の肺静脈血栓塞栓症9例を抽出した。血栓および血栓周囲の器質化等の病理組織学的検査により、9例のうち7例には新鮮血栓、4例には器質化した血栓が観察され、4例ではその両者が混在していた。血栓形成時期と死亡時期との関係として、①新鮮血栓が飛来して急死した事例、②器質化した血栓が飛来して急死した事例、③血栓が飛来してから死まで長時間を要した事例の3パターンに分類できた。
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