社会問題となっている入浴死の病態解明を目指して,温水溺死モデル及び剖検例の臓器を試料とした検討を行った。動物実験では,35及び38℃の温水溺死群では肺の水チャネルaquaporin(AQP)5 mRNA発現が低下し,38及び41℃の温水溺死群では熱ショック蛋白heat shock protein(HSP)70-5をコードするHSPa5 mRNA発現が上昇していた。実際の剖検例でも入浴中溺死例では肺のAQP5の発現が低下し,HSP70発現が上昇することを免疫組織学的に明らかにした。以上の結果から,AQP5及びHSP70発現の変動は,入浴中溺死の法医学的診断の有用な指標となる可能性が示唆された。
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