研究課題
下大静脈結紮による深部静脈血栓症(DVT)モデルを用いて,これまでに血栓陳旧度を炎症に関わる因子について,免疫組織化学的に判定する指標を検索してきた.本研究課題ではオートファジーの,血栓形成・溶解過程における動態を明らかにし,さらに血栓陳旧度判定への応用の可能性を検討した.DVTモデルは,野生型マウスの下大静脈(IVC)を,麻酔下で結紮して作成した.結紮後1~21日目にIVCを採取し,パラフィン包埋組織標本を作成した.オートファジー検出を目的とした免疫染色には抗LC3抗体ならびに抗p62抗体を用いた.この染色像について蛍光顕微鏡観察下にて,LC3陽性細胞数(1000倍,5視野)と,p62陽性細胞の有無により,血栓内におけるオートファジーの動態を評価し,血栓陳旧度との関係を明らかにした(各グループn=5).結紮から1日目の血栓内にはLC3陽性細胞は観察されなかったが,3日目以降の全ての血栓について,主に辺縁部に観察され,10日目に最も多く(25.2±0.93),以降は減少傾向を認めた.またp62陽性細胞は3日目以降の全ての血栓について,LC3と同様に主に血栓辺縁部に観察され,特に5~10日では明瞭に観察された.また蛍光二重染色の結果,血栓内のp62の主な産生細胞はマクロファージやCD31であることが分かった.以上の結果,血栓溶解過程では,血栓内に生じたオートファジーが関与していることが明らかとなり,特に血管新生に寄与している可能性が示唆された.P62陽性細胞が観察される場合は3日以上経過した血栓であり,特にLC3陽性細胞数が10以上で,多数のp62陽性細胞が明瞭に認められる場合は,5~10日経過した血栓と推定できた.以上の結果,法医診断学的には,血栓中のオートファジーの動態が,剖検例においても血栓の陳旧度判定の有用な指標となると考えられた.
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すべて 雑誌論文 (8件) (うち国際共著 1件、 査読あり 8件、 オープンアクセス 8件) 学会発表 (33件) (うち国際学会 14件、 招待講演 2件)
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