研究実績の概要 |
北海道、東北地方および四国地方のトリカブト類を採取し(60草本以上)、対象としている7ローカス(ITS, rbcL, matK, trnL-F, trnS-G, psbA-trnH, rpl20-rps12)の塩基配列を決定し、これまでに調べてきたデータと比較した。その結果、トリカブト亜属については2倍体種と4倍体種がrbcLを除く各ローカス配列において明らかに異なっており、その由来が異なるであろうことが推測された。2倍体種の北海道、東北および関東以南に自生する種はそれぞれ種レベルで異なることが明らかになったのに対して、4倍体種についてはITS配列で地域に特徴的な塩基置換があったものの、他のローカスで明確にいずれかの種を識別できるような配列はみつからなかった。このことは、4倍体種が形態学的に多くの種に分類されているものの、遺伝的な変異性は極めて少ないことを意味し、DNAレベルにおける新しい分類を考慮する必要があると考えられた。 毒性分析については、おもに主要4成分(アコニチン、メサコニチン、ジェサコニチン、ヒパコニチン)の比率ならびに総濃度を調べている。東北地方の4倍体草本には毒性が最も強いとされるジェサコニチンが占める割合が多いが、南下するに従ってその比率は減少傾向にあった。また、この4種以外のアルカロイド成分も新たに検出され、現在その詳細について検討中である。一方、従来から毒性が低いとされる2倍体種および別亜属のレイジンソウ類では塊根に含まれる4成分はいずれもかなり低いか検出されないレベルであることが確認された。
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