チャイルド・デス・レビュー(CDR)とは、乳幼児を中心とした小児の突然死や事故に伴う外因死を様々な角度から検討し、再発予防を提言する海外で採用されている社会的な制度である。今回の研究では、死因が十分に特定できず原因不明とせざるをえなかった突然死に対して、遺伝性疾患を調べる死後遺伝学的検査を確立してゆくこと加えて、突然死が起こった状況について資料から疫学的解析を実施した。 現在までに、法医解剖となった予期されない小児の突然死例に対して、1例に心筋症を発症する可能性のある変異をMYH7遺伝子に見出すことができた。さらに、この遺伝学的診断の中で、遺伝カウンセラーにグリーフケアを依頼し、臨床心理士が遺族の対応に当たる流れを学内で確立することができた。 後向き研究として東海大学医学部法医学領域における6年間の解剖例から、明らかな外因死を除いた1歳未満乳幼児急死39例を抽出し、剖検所見、状況等の情報や母子手帳等を資料として、問診・チェックリストの各項目を埋めてみた。死因としては、SIDS16例、不詳16例、肺炎2例、インフルエンザ2例等であった。全体像としては、平均5.1月齢で2ヶ月児が13例と最も多く、男児25例(64%)、女児14例(36%)であった。第2子以降が59%を占め、第1子より多かった。平均出生体重は3005±400 g、在胎週数は平均38.6±1.6、母親と父親の年齢は、26.5±6.1歳と28.8±7.8歳であった。全項目のうち、発見場所、発見者、異常発見時の時刻、発生時睡眠、添い寝等については9割以上で確認できたのに対して、寝具の柔らかさ、死亡時の部屋の暖房、普段の睡眠中の着衣、母親の育児ストレス、養育環境・態度の印象等については2割以下の回答率にとどまった。法医剖検が提供できる情報の範囲が明確化できたので、乳幼児突然死の解析に役立てることができると考えている。
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