研究課題/領域番号 |
15K08885
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研究機関 | 東京医科大学 |
研究代表者 |
原 修一 東京医科大学, 医学部, 准教授 (70208651)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 一酸化炭素中毒 / NADPH oxidase / dual oxidase / ヒドロキシルラジカル / ラット / 線条体 |
研究実績の概要 |
一酸化炭素(CO) 1000 ppmあるいは3000 ppmを暴露したラットの線条体NADPH oxidase (Nox) familyのタンパク発現量を対照(Air暴露)と比較したところ、dual oxidase (Duox) 1およびDuox2はCO濃度に依存して減少し、3000 ppm CO によるDuox2の減少は統計学的に有意であった。これは、Duox2 mRNA発現の結果と相反するものであった。Nox1、Nox2、Nox3およびNox4のタンパク発現においては、著明な変動は認められなかったが、3000 ppm CO群のNox3では増加傾向が観察された。また、Nox1、Nox2および Nox3の活性化因子の一つであるRac1(RAS-related C3 botulinus toxin substrate 1)は、CO濃度に依存して減少したが、統計学的に有意な変動ではなかった。一方、3000 ppm COによるラット線条体のヒドロキシルラジカル生成は、アンジオテンシン II(AT-II;Nox活性化を介して活性酸素生成すると示唆されている)の1型受容体を阻害するlosartanにより強く抑制された。AT-II自体を線条体へ直接投与した場合には、高用量でのみヒドロキシルラジカル生成が認められ、3000 ppm COと同程度のヒドロキシルラジカル生成にはフォルスコリンやATPなどの場合の20倍以上の用量が必要であった。AT-IIの線条体内投与によるヒドロキシルラジカル生成に対するlosartanの効果を検討したところ、その効果はまったく認められなかった。AT-IIの線条体内投与後、ケージ床の尿を舐める行動が観察され、これはAT-IIによって誘発される飲水様行動ではないかと推察された。AT-IIによる飲水行動は、AT-II 1型受容体阻害薬によって抑制されることが報告されているが、AT-IIによる飲水様行動に対するlosartanの抑制効果は認められなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
RNaseに抵抗性を持つsiRNAの脳内投与実験はコスト面を考慮して延期し、NoxおよびDuoxのタンパク発現(Duox1とDuox2については再購入した抗体を使用)について検討し、AT-IIの役割についての検討を開始した。
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今後の研究の推進方策 |
3000 ppm COによるヒドロキシルラジカル生成におけるAT-IIの役割について、次のような計画に従って研究を進める予定である。(1) 3000 ppm COによるヒドロキシルラジカル生成に対するAT-II 2型受容体阻害薬であるPD123319、Mas受容体(AT-(1-7) 受容体)阻害薬であるA779、さらにAT-II 生成酵素の阻害薬であるbenazeprilの効果を検討する。(2) 100 nmol AT-II線条体投与によるヒドロキシルラジカル生成に対するlosartanの高用量およびPD123319の効果を検討する。(3) 3000 ppm COによるヒドロキシルラジカル生成は、cAMP生成とパラレルであり、cAMPシグナル伝達系が関与することが示唆されていることから、3000 ppm COによるcAMP生成に対するlosartan、PD123319およびA779の効果を検討する。(4) AT-II受容体は、GqやGiとカップルすることから、3000 ppm COによるヒドロキシルラジカル生成がprotein kinase Cおよびphospholipase C活性化を介する可能性を否定できない。そのため、それぞれの阻害薬であるchelerythrineおよびedelfosineの効果を検討する。(5) 3000 ppm COによるヒドロキシルラジカル生成に対する内因性AT-IIの関与について、線条体の細胞外AT-II量の変動を測定して検討する
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次年度使用額が生じた理由 |
残金が少額であり、今年度の物品購入には不十分であったことから、次年度予算と合算して物品購入費として使用する方が有意義であると考えられたため。
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次年度使用額の使用計画 |
物品購入に充てる予定である。
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