研究課題/領域番号 |
15K08887
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研究機関 | 東京女子医科大学 |
研究代表者 |
呂 彩子 東京女子医科大学, 医学部, 講師 (50296555)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 法医病理学 / 脳動脈 / 血管リモデリング |
研究実績の概要 |
本研究では法医解剖例を対象とし、様々な脳血管障害における脳血管平滑筋形質変換の関与の有無と法医病理学的評価法の確立を目指す。 初年度は研究資料の蓄積として法医解剖例の脳血管の採取を行い、ホルマリン固定後パラフィン包埋し、0.1mm間隔の連続組織切片の作製を行った。切片はヘマトキシリンエオジン,エラスチカワンギーソン染色を行ったのち顕微鏡デジタルカメラで撮影し、連続的観察が可能な状態とした。 平滑筋形質変換をへて血管のリモデリングに影響すると考えられる脳血管の合流形態について、前大脳動脈・前交通動脈合流部破裂動脈瘤症29例に着目し、肉眼所見・組織所見を検討した。検討の結果、前大脳動脈の左右差が65%に認められた。動脈瘤のネック部分は1例を除き前大脳動脈合流部より遠位に存在していた。前交通動脈がなく、片側の前大脳動脈が中大脳動脈のようにY字に分岐して瘤を形成する例が4例あった。破裂部位の79%が瘤の先端の破裂であったが、中部や根元で破裂する例もみられた。動脈瘤の組織所見では、血管壁が1層構造のもの、違う壁の層状構造が認められるものに大別された。また、層状の線維化と菲薄化が混在する症例があり、動脈瘤の成長経過を反映する所見と考えられた。瘤壁の一部では収縮型平滑筋細胞が脱落し、内膜側に合成型平滑筋細胞の増生が認められた。以上の結果から動脈瘤は瘤壁が均一に拡張すれば先端が破裂すると考えられるが、時間経過のある瘤では瘤壁のリモデリングが生じ、瘤内の血行動態を変化させ破綻部位に影響すると考えられた。 これらの初年度の研究成果を基に、次年度以降も症例を蓄積するとともに、脳血管平滑筋細胞の病理組織解析をすすめ、血管病変発生・成長に関与する血管組織の形態変化を多角的に検討する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画外の申請者の所属機関変更が生じたため、研究設備移動の関係から免疫染色の予備実験等、研究内容の一部を次年度実施、使用とした。 その他の研究実施計画は順調に進行している。
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今後の研究の推進方策 |
次年度以降も検討症例の蓄積を継続し、法医解剖例の脳血管の組織標本作製を行う。 初年度の結果をふまえ、脳血管における平滑筋細胞の分化と局在につき平滑筋分化マーカーであるS100A4, αSMAなどを一次抗体とした免疫組織染色を行う。染色結果から収縮型,合成型平滑筋細胞の出現と局在を観察する。同時に形質転換誘発因子や、合成型平滑筋の産生物質である細胞外マトリックス等を一次抗体とした免疫組織染色を行う。これらの平滑筋形質変換に関連する分子病理学的マーカーの発現を観察することで、脳血管病変、損傷に関与する血管組織の病理形態変化を多角的な観点から検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究成果報告、論文印刷が予定より少なかったため次年度使用となった。 申請者の所属機関変更が生じたため、免疫染色の予備実験等については次年度以降の実施とした。 その他の標本作製等の初年度購入・使用は計画通り実施された。
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次年度使用額の使用計画 |
免疫組織学的検討、研究成果報告、論文印刷等に使用する予定である。
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