研究課題/領域番号 |
15K08894
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研究機関 | 科学警察研究所 |
研究代表者 |
桑山 健次 科学警察研究所, 法科学第三部, 主任研究官 (40356233)
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研究分担者 |
宮口 一 科学警察研究所, 附属鑑定所, 鑑定官 (10370884)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 毛髪 / 薬物 / 質量分析 |
研究実績の概要 |
従来の毛髪中薬物の分画分析では、十分な検出感度を得るために数十本の毛髪を束ねた上で数cm間隔に分画するので、数か月レベルでの薬物摂取時期の推定しかできない。本研究では、単毛髪を0.5 mm以下(1日の成長速度に相当)の微小断片に輪切りにし、超高感度な質量分析計を用いて各断片から薬物を検出する。血中濃度推移との比較により、日数レベルでの毛髪内薬物挙動を解明する。さらに、毛髪採取の数週間前に一定間隔で指標物質を摂取し、薬物(摂取日不明)及び指標物質(摂取日既知)が検出される断片間の距離から、毛髪の成長速度も加味して薬物の摂取日を特定する。これにより、被疑者の供述等によらず科学的に日数レベルでの薬歴を把握でき、毛髪中薬物鑑定の証明力を向上できる。 平成29年度は、倫理的に摂取可能で、かつ毛髪から顕著に検出される物質を指標物質として選定するため、倫理審査の承認の下、被験者に様々な市販薬(ジヒドロコデイン、クロルフェニラミン等)を摂取させ、毛髪を採取した。1本の毛髪を0.4 mmに分画し、各断片をチューブに回収した。各断片に抽出液を添加し、10分間の超音波処理及び1日の浸漬により薬物を抽出し、質量分析計を用いて薬物濃度を測定した。各断片中の薬物濃度と毛髪部位情報を統合し、毛髪内薬物分布曲線を描いた。摂取日を反映して毛髪から顕著に検出されたジヒドロコデイン、クロルフェニラミン等の市販の風邪薬中の成分は、指標物質として適当であった。また、これらの薬物を一定間隔で摂取させ、そのいずれかを薬物又は指標物質とみなし、毛髪内の薬物と指標物質の分布間隔をもとに薬物摂取日を特定する方法を確立した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画どおり、倫理的に摂取可能で、かつ毛髪から顕著に検出される物質を指標物質として選定し、毛髪内の薬物と指標物質の分布間隔をもとに薬物摂取日を特定する方法を確立できたため。
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今後の研究の推進方策 |
倫理審査の承認の下、被験者に薬物及び指標物質を摂取させ、毛髪を採取する。異なる薬物、被験者、毛髪の採取日等においても、毛髪内の薬物と指標物質の分布間隔をもとに薬物摂取日を精度よく特定できるか検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)国際学会に参加できなかったため。 (使用計画)国際学会に参加する。都合により参加できない場合は、データ取得に専念し、電動マイクロマニピュレータの部品等を購入する。
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