本研究は、肝細胞を用いた危険ドラッグ代謝予測系の構築と代謝物データベース作成を目的としている。平成29年度は、引き続き麻薬のフェンタニル及びアセチルフェンタニルをモデル薬物とし、肝腫瘍由来細胞株であるHepaRG細胞の薬物代謝活性について調べた。また、フェンタニルの代謝について、抗CYP抗体を用いたCYP反応フェノタイピングを行った。 HepaRG細胞は、これまでに評価した細胞と比較し、高い薬物代謝活性を有していることが確認された。ただし、一部の代謝物(CYP2D6が生成に関与すると考えられるもの)の生成が少なかったり、あるいは認められなかった。抗CYP抗体を用いたフェノタイピングにおいては、フェンタニルの脱フェニルエチル体、(ω-1)-ヒドロキシ体、β-ヒドロキシ体についてはCYP3A4の関与が、4'-ヒドロキシ体についてはCYP2D6の関与が示唆された。 さらに、Microsoft Accessを用いて、スペクトル検索、薬物名検索、文献情報表示等が可能な乱用薬物代謝物データベースを作成した。スペクトル検索では、スペクトルの数値を最大3つまで入力して検索することができ、また、薬物名検索も可能である。検索結果は、リストに表示され、質量スペクトル情報は、主要イオンの数値の羅列として示される。リストの行をダブルクリックすると、当該化合物の詳細情報を確認することができる。また、文献PDFファイルのファイル名をデータベースに登録し、当該PDFファイル本体を所定のフォルダに置いておけば、「PDF」ボタンをクリックすることで、文献PDFファイルが表示されるなど、便利な機能を搭載した。本データベースに肝細胞を用いた乱用薬物代謝実験データや文献上の代謝物データを登録することで、代謝物データのより効率的な活用が可能となることが期待される。
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