本研究課題では、平成28年度に続き加齢性筋肉減少症(サルコペニア)の病態とその制御アプローチに関して、炎症老化制御(inflammaging)の観点から明らかにすることを中心として、薬剤(核内受容体リガンド、漢方薬など)や運動(トレッドミルなど)、栄養(分枝鎖アミノ酸など)をはじめとする各介入・導入によるサルコペニア制御の可能性を検討し、フレイル・転倒予防をはじめとする介護予防や老年疾患予防・治療に向けた基盤構築を目指してきた。漢方薬やその成分の中には男性ホルモン、女性ホルモン様作用、抗炎症効果を有する可能性が示されてきていることから、一部の漢方薬について抗炎症効果、サルコペニア抑制効果を主にin vitroで検討し、その際、DMSO (Dimethyl sulfoxide) や蒸留水などを用いて漢方薬成分の抽出を行なった。また、骨格筋系培養細胞を用いてLPS(Lipopolysaccharide)などの添加に対するビタミンD、性ホルモン、HMB(β-Hydroxy-β-Methylbutyrate)分岐鎖アミノ酸代謝物)のほか、漢方薬抽出物・成分などを介した炎症老化制御や筋蛋白分解抑制作用の可能性について遺伝子レベルでの解析を中心に検討を行ってきた。上記薬剤の中には、性ホルモン様作用、炎症老化制御効果、筋分化促進効果等、加齢性筋肉減少症の予防・治療に有用である可能性が示唆された。
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