がん悪液質はがん患者における死因の一つとして重要な症候群である。悪液質の特徴の中でも、過剰なエネルギー消費およびそれに導かれる骨格筋の消耗・萎縮(サルコペニア)はキーとなる病態であるが、その発症メカニズムの詳細はいまだ不明である。しかし近年動物モデルにおいて、サルコペニアが導かれる要因として脂肪組織が重要な役割を果たしている可能性が示唆されている。本研究ではがん悪液質の発症メカニズム解明のため、進行期がん患者における臨床的な特徴、特に体組成変化を検討することで、がん悪液質の重要な病態であるサルコペニアの発症機序の解明を目的とする。 平成30年度は引き続き進行期がん患者で悪液質を生じた患者を被験者として、体組成解析を検証する研究を実施した。筋肉量と脂肪組織の量、また筋肉内の脂肪沈着の継時的変化の検証を行っている。またPET/CT撮影による褐色脂肪組織の評価法も提唱されており、ガイダンスとしても報告された。動物モデルでは悪液質と褐色脂肪組織との関連が示唆されており、PET/CTを撮影した被験者において悪液質と褐色脂肪組織との関連が評価可能か検討も行っている。 また、まだ悪液質を生じていない治療中の進行期がん患者を被験者として、前向きに筋肉量および脂肪量の評価を行うコホート研究を行っている。登録時から3ヶ月、6ヶ月の時点での体組成解析を行い(インピーダンス法およびCTによる筋肉量・脂肪量の評価)、筋肉量および脂肪量の推移および握力の変化との相関関係の解析を行っている。
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