研究実績の概要 |
インスリン抵抗性(IR)は、認知機能低下と関連する可能性が示唆されており、特にあるアルツハイマー型認知症(AD)の病理を促進する可能性も示されている。しかしながら、臨床的なデータが不足しており、IRが認知機能低下およびADの病理変化促進への関与に関わる機序も充分には明らかにされていない。ADの治療法開発が急がれるなか、IRの認知機能低下の機序解明は新たな治療戦略の糸口になる可能性がある。そのため本研究では、ADとその前駆段階であるMild cognitive impairment (MCI),さらにその前段階であるsubjective cognitive impairment (SCI)を含む対象に対して、MRIのvoxel based morphometryによる脳萎縮評価と神経心理検査を併せた包括的・縦断的な検討を行った。 方法:登録された対象患者は、空腹時の血中インスリン(IRI)と血糖値(FBS)および一般性科学検査が実施され、認知機能評価として、MMSE, ADAS-Jcog, Clock drawing test (CDR), Trail making test AおよびB, Stroop test, 単語記憶テスト、論理記憶テストverbal fluency test (1initial letter, category), Digit symbol substitution, Digit spanを実施。MMSEのcut-offである23/24で全体を2群〔認知機能低下群Vs認知機能維持群〕にわけT検定を行った。 結論:認知機能低下群では、血糖値に違いがないにも関わらずIRIが高く、インスリン抵抗性の認知機能低下への関与が推測された。今後、症例数をさらに増やし経過を前向きに追っていくことにより、インスリン抵抗性の認知機能低下への関与の詳細を明らかにする必要がある。
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