研究課題/領域番号 |
15K08908
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
柳川 まどか 名古屋大学, 医学部附属病院, 助教 (50566982)
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研究分担者 |
梅垣 宏行 名古屋大学, 医学系研究科, 准教授 (40345898)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | アルツハイマー病 / SCI / 運動介入 / 髄液バイオマーカー |
研究実績の概要 |
認知症を発症する前段階である記銘力のみが低下している状態をMild cognitive imparement(MCI)とよび近年ではMCIよりもさらに前の段階として、記銘力低下もおきておらず、神経心理テストなどでは客観的な認知機能低下を認めないが自覚的な「もの忘れ」のみがある段階をSubjective cognitive imparement(SCI)と呼び、それらがMCIのさらに前段階である可能性が指摘されている。一方で最近、運動によって認知機能低下を抑制できるという研究報告や介入報告があり、運動介入と認知機能に関連する報告は相次いでいる。他施設から運動とバイオマーカーに関する報告も小規模ながら多くされているが、一致した見解をえていない。それらをふまえ、なぜこのように結果が一定しないのか情報収集を行った。我々は一昨年までMCIの患者を対象にとし、運動介入の前後で認知機能低下、髄液Aβ、リン酸化Tauなどを評価することにより運動による認知機能保護効果がAβ沈着の進行抑制によって得られるか否かを検討した。残念ながらMCIを対象とした試験では有意差が認められなかった。そのため、手技や試験方法について研究手法に問題がないか改良する点について情報収集を行った。一方当院の倫理委員会が昨年度から健常者に対する髄液採取における安全性における懸念を表明し、倫理委員会通過に難渋した。髄液採取に関しては他医局からの意見もあり緩和方向であり現時点で倫理委員会提出中であり、通過見込みである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
前年度までのMCIを対象として同様の研究では明らかな有意差をみいだせなかったこと。登録者をのばすことができなかったことを踏まえ研究手法の問題点、改良点を抽出し分析することが何より重要と考え、その上でより正確な髄液検査手法(特に採取後の髄液の取り扱いについて)の情報収集に時間を要した。加えて当院の倫理員会の侵襲性ある臨床介入研究には倫理規定が厳格化され特に髄液採取における安全基準の見直しが厳格化されたこと、患者に対する保証制度が変更となり倫理委員会通過が極めて困難になったことが大きい。しかしながら、髄液採取に関して一定の倫理員会の通過めどがたったため、申請中である。
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今後の研究の推進方策 |
前MCIを対象とした同様の運動介入研究ではMCIの診断をきわめて厳格に行っていたため登録希望者を獲得するのに難渋した経緯があった。実際に登録希望者の40%が厳格なMCI基準のために実際に神経心理テストの段階で登録不能となっていた。今回はその登録不能ととなっていた者のうち現時点でSCIにとどまっている可能性のあるものを優先的にピックアップしてあるため登録にはMCIほど難渋しない見込みである。また研究対象者はSCIであり物忘れの自覚はあるものの生活機能障害はなくかつ神経心理テスト結果においても正常域であるため、前回のMCI研究に比較して対象者のリクルートは難渋しない見込みである。また髄液採取における被害賠償においては民間の損害保険に加入する資金めど(医局支払)がついたため、この点において倫理委員会通過のめどがたったといえる。大幅に遅れているが、なんとか試験の実施をしたいと考えておりご理解いただきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
他施設での同様な実験でも結果にばらつきが認められ、髄液取扱い研究手法の問題点、改良点がかなりあることがわかり、より正確であり厳格な髄液取扱い手法取得に時間を要した。倫理委員会通過に時間を要している。
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次年度使用額の使用計画 |
試験の補佐員人件費、および当該研究に関する情報収集・研究発表のための学会参加旅費に使用予定。
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