研究実績の概要 |
認知症の原因は、アルツハイマー病と血管性認知症が全体の約8割を占め、現時点で根本治療法はない。申請者は、三重県御浜町・紀宝町と共同で、運動療法と音楽療法を組み合わせた音楽体操を用いて、地域在住高齢者に対する認知機能維持・改善の取り組みを行ってきた (Satoh, PLOS ONE, 2014)。 本研究では、認知症患者を対象に音楽体操の有効性を検討した。軽度から中等度の認知症患者 (MMSE 15~26点) を対象とした。トレーナーの指導のもと週1回・40分間の音楽体操を半年間行った (音楽体操群 43名)。コントロール群として、市販の高齢者用ドリルやいわゆる脳トレを用いた群を置いた (認知刺激療法群 42名)。半年間の介入期間の前後で神経心理検査と介護者へのインタビューを行い両群の認知機能・ADLの変化を比較した。 検査未完や脱落者23名を除く62名について解析した。年齢、教育歴、開始時MMSEに両群で差はなかった。変化量について群間比較を行ったところ音楽体操群で、立方体模写に有意な改善 (p=0.009)、TMT-A (p=0.070) とFIM (p=0.066) に改善傾向がみられた。各群内での前後比較では、両群ともに立方体模写 (音楽体操群 p<0.001; 認知刺激療法群 p=0.001)、音楽体操群ではRCPMの施行時間 (p=0.021)、認知刺激療法群ではLM-I (p=0.039) が有意に改善した。FIMは音楽体操群では変化はなかったが (p=0.385)、認知刺激療法群は有意に悪化していた (p=0.048)。以上より、軽度~中等度の認知症患者に対する非薬物療法として、音楽体操と認知刺激訓練を組み合わせた最良の方法が設定できると考えられた。本研究の成果は、2017年にJournal of Alzheimer's Disease に掲載された。
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