研究課題/領域番号 |
15K08915
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
坂口 学 大阪大学, 医学系研究科, 招へい教員 (70432474)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 悪性腫瘍合併脳梗塞 |
研究実績の概要 |
2019年度は、実施施設9施設で、さらにペースをあげて登録症例を増やしていく方針としたが、登録症例数は2020年3月末で、当初の4年目の予想登録症例数200例に対して120例の症例登録(大阪大学医学部附属病院65例,JCHO星ヶ丘医療センター1例,国立病院機構大阪医療センター8例,国立病院機構大阪南医療センター3例,大阪労災病院8例,神戸市立医療センター中央市民病院5例,淀川キリスト教病院2例,国立循環器病研究センター15例、大阪急性期・総合医療センター13例)となっている.登録症例数は症例の追跡は,現時点では概ね予定通り進めることができている。 本研究で得られたデータから、化学療法が原因と推定される脳卒中は、従来想定されていたよりも少ないのではという着想が得られた。そこで、悪性腫瘍と診断されている症例において、化学療法と脳卒中リスクの関連を検討したところ、悪性腫瘍症例の化学療法実施で脳梗塞の増加は認められるが、病期で補正すると関連がなくなることを発見し、2020年2月にロサンゼルスで行われたInternational Stroke Conference 2020で"The Effect of Chemotherapy on Stroke Risk in Cancer Patients."とのタイトルで発表するとともに、Thrombosis and Haemostasis誌に2020年”The Effect of Chemotherapy on Stroke Risk in Cancer Patients.”として発表している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
これまでの研究進捗の遅れを取り戻すべく、参加施設担当者と密接に連絡を取り、各施設の登録可能症例の掘り起こしを行うことで、可及的に症例登録推進を行ってきた。さらに研究参加施設を増加するため、大阪急性期・総合医療センターを実施施設に加え、同施設および大阪大学医学部附属病院からは継続的に症例登録が得られている。しかしながら、全体として症例登録数はやや伸び悩んでおり、現在まで(2020/3/31の時点)120例の登録が完了した。登録症例数が伸びない原因は、研究対象者が予後不良のため心理的負担が大きく研究参加のインフォームド・コンセントの手続を行うことが困難であることや、脳卒中診療科以外の科に入院している症例が多く、登録に難渋することにもよる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は、研究対象者が予後不良のため心理的負担が大きく研究参加のインフォームド・コンセントの手続を行うことが困難である。また、死亡などにより連絡をとることが困難となることが多い。そこでオプトアウト形式での患者登録方法も模索してきたが、入院時検体の保管期間等の問題から制限も多く、抜本的な解決法とはならなかった。 加えて、新型コロナウィルス感染症拡大による研究活動への影響が見込まれる。本研究の参加施設の多くは新型コロナウィルス感染症症例の受け入れ指定病院であり、本研究の推進に注力することが難しくなっている。また、外来への通院も可能な限り少なくするべき状況にあり、今後の感染状況次第では登録後のフォローアップが不十分になってしまう恐れもある。 前述の事情により現状では予定されていた目標症例数への到達は困難と考えられる。本研究は、本邦における悪性腫瘍合併脳卒中の実態を明らかにする学術的/社会的に重要性の高い研究であるが、やむを得ない処置として、目標症例数を150例へと減少させる(症例登録期間を2020年9月31日まで)。得られた成果を公表し、社会へ還元する必要があるため、その時点で得られたデータを解析し公表する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
前述のように登録数がやや伸び悩んだため使用額の大部分を占める検体検査費が当初の予定より少なく、残額が生じた。予定症例数の削減により検体検査数は減少するが、従来では予定されていなかった腫瘍関連バイオマーカーを追加し、さらに詳細な検討を行うこととしている。また、学会活動や論文発表を通じて研究成果を社会へ還元するためにも研究費を使用する見込みである。以上の取り組みにより次年度単年度予算使用額も今回生じた次年度使用額分も含めて充填する予定である。
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