研究課題
加齢性サルコペニアは加齢に伴う筋肉量の減少、筋力の低下、筋線維数の減少を生じ、日常生活動作(ADL)や生活の質(QOL)も低下する。これまで我々は、鍼通電刺激でのミオスタチン遺伝子発現の抑制とマウス骨格筋幹細胞の増殖誘導、鍼通電刺激による廃用性筋萎縮マウスモデルの筋萎縮予防、を見出した。今回、加齢性サルコペニア予防法の確立を目標に研究に取り組んだ。本年度は、最初に加齢者へのマイルドな鍼刺激方法を検討した。ミオスタチン遺伝子発現の抑制効果のあるフェムト秒レーザー鍼と、切皮後の組織像は類似しているので、刺鍼よりもマイルドな切皮刺激の効果を検討した。しかし、切皮では骨格筋でのミオスタチン遺伝子発現の抑制効果は見られず、現時点での侵襲度の低い治療方法は鍼通電刺激である事が再確認された。次に、2週間隔日で30分間の鍼通電刺激した10ヶ月齢の老化促進モデルマウス(SAM)の試料を解析した。SAMは早期に老化兆候を示し、促進老化と短寿命を示すP系と正常老化を示すR系からなる。SAMP8とSAMR1は、下腿部への鍼通電刺激群と無刺激群に分け、ヒラメ筋の相対筋量と筋線維径(横断面の短径)の解析に供した。その結果、いずれのマウスでも相対筋量に差はなく筋線維径は鍼通電刺激群の方が減少していた。次に、タンパク質の合成と分解について、ウェスタンブロティング法でmTOR/p70S6Kシグナル伝達の活性を指標に解析した。その結果、鍼通電刺激群と無刺激群のmTOR活性に差はなく、p70S6K活性はSAMR1の鍼通電刺激群では低下したがSAMP8では鍼通電刺激群と無刺激群の間に差はなかった。また、Wntシグナル経路は評価系の確立まで終えた。この後、さらに実験結果を分析する予定である。
すべて 2018 2017
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (2件)
Transgenic Research
巻: 27 ページ: 15-23
10.1007/s11248-017-0054-x
Lasers Med Sci
巻: 32 ページ: 2167-2171
10.1007/s10103-016-2124-3
PLoS One
巻: 12 ページ: 1-9
10.1371/journal.pone.0188407