研究課題
本研究の目的は、臓器特異的自己免疫疾患である1型糖尿病(T1D)発症との関連が指摘されているウイルス感染や腸内細菌における、樹状細胞(DC)のスカベンジャー受容体SR-Aの役割を解明し、T1D発症予防法へと発展させることである。我々はこれまでの1型糖尿病研究で多くの知見を得てきたが、最近、SR-Aと二本鎖RNAウイルス感知センサーであるTLR3との関係を報告した。今回はさらに、SR-Aと他の病原体感知センサーであるTLR4(グラム陰性桿菌)やTLR9(DNAウイルス)などとの関連及びTLR3との関連が示唆されるRaftlinとの関係を解明することで、ウイルスや細菌感染に対する有効な予防法を見出しヒトT1Dの発症予防法を開発することを最終的な目標とした。我々が作製したSR-A 欠損NODマウスを用いて、SR-A-TLRシグナルにおいて、我々はTLR3へのシグナル以外にも、TLR3と同様に、エンドソーム上に存在するTLR9, TLR7へのシグナルや下流にMyD88を有さないTLR4(一部の経路)へのシグナルの存在を考えている。①NODマウス(自然発症モデル) ②cyclophosphamide(CY)誘導NOD糖尿病モデル(薬剤誘発モデル)で、細胞外病原体を認識する病原体感知センサーTLR4やTLR9, TLR7のagonistや抗体をSR-A欠損NODマウスとNODマウスのそれぞれに投与し、それらのマウスでのT1D発症の推移を検討した。まず、TLR4のagonistと考えられているLPSの投与実験では、1)NODマウスの自然発症モデルへのLPS投与群と非投与群での糖尿病発症率を比較し、LPS投与群で発症率の抑制傾向を認めた。2)NODマウスのCYモデルへのLPS投与群と非投与群での糖尿病発症率を比較し、LPS投与群で明らかな発症率の抑制を認めた。3)SR-A欠損NODマウスの自然発症モデルへのLPS投与群と非投与群での糖尿病発症率を比較し、LPS投与群で発症率の抑制傾向を認めた。4)SR-A欠損NODマウスのCYモデルへのLPS投与群と非投与群での糖尿病発症抑制傾向の有無を検討中である。
3: やや遅れている
NODマウスおよびSR-A欠損NODマウスのそれぞれの自然発症モデルおよびCYモデルにおいて、TLR4のagonistと考えられているLPSの投与実験を行なって興味ある結果は得られているが、その一方でTLR7やTLR9のagonistの投与実験にはまだ至っていないため。
NODマウスおよびSR-A欠損NODマウスのそれぞれの自然発症モデルおよびCYモデルにおいて、LPSの投与実験により、それぞれの実験系においてT1D発症率の相違が得られたメカニズムを比較検討するため、脾臓、PLN(膵リンパ節)、MLN、パイエル板におけるDCやT細胞のpopulationなどを検討する。①細胞表面マーカーをFlow cytometerを用いて以下の解析を行なう。1.T細胞、B細胞、DC、マクロファージなどの細胞populationを検討する。2.CD4CD25制御性T細胞、CD8制御性T細胞、Foxp3陽性T細胞の存在の有無と比率を検討する。3.CD11c DCの制御性マーカーの解析(B220,CD45RB,HLAClassII,CD80,CD86,CD103など)を行なう。4.疾患誘導モデルをコントロールとして、細胞populationを比較検討する。②サイトカイン分泌をELISAを用いて解析し、抑制性サイトカインであるIL-4、IL-10、及びTGF-βの分泌を検討する。③膵臓の組織学的検討(H-E染色、免疫染色)し膵島炎やapoptosisを検討する。
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日本内分泌学会雑誌
巻: 91 ページ: 7-9
月刊糖尿病
巻: 7 ページ: 48-57