申請者らは、体細胞テロメアDNA長を測定することで個体の生物学的老化の評価を行ってきている。この老化の速度を把握するべく、テロメア長変化のみならず、老化して死滅していく細胞の量を、この融化した細胞由来のテロメアすなわち細胞外テロメア断片量から推定し、ほぼリアルタイムでの老化状態を把握することで老化速度の評価につなげる試みを行った。当初申請者自身の血清から定量PCRでテロメア断片を検出できたことから、その定量法の確立を試みたが、条件による揺らぎが大きく、これは、おそらく検体採取後の保存方法、DNA抽出方法にさらに工夫すべき条件があったと思われるが、最終的に信頼性のある定量にはいたらなかった。一方、それと並行に末梢血白血球のテロメア近傍領域のメチル化の程度を測定したが、測定できた範囲で、揺らぎがありながらもある程度、把握できた細胞外テロメア量とテロメア近傍領域のメチル化の程度は相関が見られ、テロメアのエピジェネティックな変化が老化速度測定のパラメータとしては有用であること目された。臨床検体での検討で老化促進状況とテロメア近傍のエピジェネティックスが並行していることも合わせて確認できたことから、限られた研究期間であり、血清テロメアの追跡のみに固執せず、テロメアのエピジェネティック変化をパラメータとして臨床検体での検討を進めていった。また、温熱効果による老化への影響を解析し、そこで得られた知見を発表するとともに、先のテロメアのエピジェネティックパラメータにより検証することを目指した。これにより1年目、2年目に温熱効果の医学的効果に関する報告と最終年度における身体温熱による抗老化効果に関する知見および臨床検査パラメータとテロメアのエピジェネティックパラメータとの平行性の検討から臨床現場での生物学的老化状態の把握に関する知見をまとめることができた。
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