研究課題/領域番号 |
15K08924
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研究機関 | 静岡県立大学 |
研究代表者 |
山田 浩 静岡県立大学, 薬学部, 教授 (40265252)
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研究分担者 |
開發 邦宏 大阪大学, 産業科学研究所, 准教授 (70419464)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | インフルエンザ / カテキン / マスク / 医療従事者 / ランダム化比較試験 |
研究実績の概要 |
インフルエンザは毎年、流行を繰り返す感染力が非常に強い重症の急性上気道感染症であり、その予防対策は公衆衛生的に極めて重要である。インフルエンザの予防対策としてはワクチンの接種、抗インフルエンザ薬の予防的投与、手洗い、マスクの着用、うがいといった方法があるが、いずれも完全に感染を阻止できない現状がある。本研究では、基礎研究で示されている茶カテキンのインフルエンザ感染抑制効果に着目し、初年度は、天然型カテキンを浸透させたマスクの着用によるインフルエンザ予防効果を、医療福祉従事者を対象としたランダム化比較試験により探索的に検討した。 医療福祉3施設の職員(成人)235名から試験開始前に十分なインフォームドコンセントによる文書同意を得た後、適格基準を満たした234名を天然型カテキン浸透マスク群(カテキンマスク群;118名)または非カテキン浸透マスク群(対照マスク群;116名)にランダムに割付け、2016年1月初旬~3月初旬の冬季インフルエンザ流行シーズンに、連続60日間マスクを着用し追跡調査した。ランダム化は評価に影響を及ぼす可能性のある因子として施設を考慮し、層別置換ブロック法で行なった。使用した天然型カテキン浸透マスク及び非カテキン浸透マスクは不織布で製作し、形状、重量、色、臭い、触感等を同一とし、盲検性を確保した。なお、本臨床試験は研究開始前に、静岡県立大学倫理審査委員会の承認を得て、臨床試験事前登録を行ってから実施した。追跡の結果、インフルエンザの発症はカテキンマスク群4名(3.4%)、対照マスク群2名(1.7%)であり、群間で統計学的に有意な差は認めなかった(P=0.68)。インフルエンザ以外の急性上気道炎の発症はカテキンマスク群28名(23.7%)、対照マスク群26名(22.4%)であり群間で有意な差は認めなかった(P=0.88)。試験期間中、重篤な有害事象及び試験の遂行に影響を与える不具合は認めなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の目標被験者数は250名であり、実際に文書同意が得られた人数は235名と被験者募集も順調で、ほぼ目標に近い被験者数となった。試験中のマスクの着用による重篤な有害事象や試験の遂行に影響を与える不具合も発生せず、安全に実施し得た点は満足のいく結果だったといえる。マスク着用期間も予定通り60日間、インフルエンザの最も流行するシーズンである1月初旬から3月初旬に各施設で一斉に実施できた。調査票の回収、記入漏れや不整合箇所の再調査も順調に進み、予定通りキーオープン、統計解析と進むことができた。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度の結果を踏まえ、平成28年度は、天然型カテキンよりも抗インフルエンザ感染抑制作用を高めた新たに開発し最適化したカテキン誘導体を浸透させたマスクの着用によるインフルエンザ発症・伝播予防効果並びに症状軽減効果を並行群間二重盲検ランダム化比較試験により検討する。当初、カテキン誘導体浸透マスクとの比較は、天然型カテキン浸透マスク、非カテキン浸透マスクの3群を予定していたが、平成27年度に実施した天然型カテキン浸透マスクと非カテキン浸透マスクの比較において差が見出されていない結果となったことから、試験デザインの再検討を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
主要評価項目であるインフルエンザの発症が予想より少なかったことにより、検査用消耗品費が予想以下であったため、翌年度に繰り越しが可能となった。
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次年度使用額の使用計画 |
マスク製作費、インフルエンザ抗原診断キット代、実施計画の打ち合わせ会議、被験者への謝金、データの統計解析のための統計ソフト代、データ保存用ハードディスク代、データ収集のための旅費・通信・運送費、データシートに入力・取り込みを行う作業の協力者への謝金、学会・論文発表のための資料代・旅費、論文投稿料、掲載料等に使用する。
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