研究実績の概要 |
本研究では茶カテキンの抗インフルエンザ作用に着目し、初年度、天然型カテキンを浸透させたマスクの着用によるインフルエンザ予防効果をランダム化比較試験により検討した。その結果、対照(非カテキン浸透マスク)群と比較し有意な差には至らなかった。そこで平成28年度から、天然型カテキンより感染抑制作用を高め新たに開発し最適化したカテキン誘導体浸透マスクの着用によるインフルエンザ予防効果を、ランダム化比較試験により探索的に検討した。 医療福祉3施設の職員(成人)に対し、試験開始前に十分なインフォームドコンセントによる文書同意を得た後、適格基準を満たす被験者をカテキン誘導体マスク群または非カテキンマスク群に二重盲検下でランダムに割付け、2017年1月初旬~3月初旬の冬季インフルエンザ流行シーズンに連続60日間、マスクを着用し追跡調査した。ランダム化は評価に影響を及ぼす可能性のある因子として施設を考慮し、層別置換ブロック法で行なった。なお、本臨床試験は研究開始前に、静岡県立大学倫理審査委員会の承認を得て、臨床試験事前登録を行ってから実施した。 参加同意が得られ適格基準を満たした243名のうち、238名が試験を完遂した(カテキン誘導体マスク群:120名、非カテキンマスク群:118名)。試験期間中、特記すべき有害事象は認めなかった。13名がインフルエンザ様症状を発症したが、群間で有意な差は認められなかった(カテキン誘導体マスク群: 7名, 5.8%、非カテキンマスク群: 6名, 5.1%)。55名が急性上気道炎症状を発症したが、群間で有意な差は認められなかった(カテキン誘導体マスク群: 23名, 19.2%、非カテキンマスク群: 32名, 27.2%)。
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